第6話 悪鬼を払う悪役令嬢と聖王国の聖女
エリザベスは目で、メイドたちに退席を命令する。
そして、ドメル司祭に、イスを勧めた。
長期戦の構えだ。
「貴方たちなら大丈夫ね」
部屋には護衛騎士のアルキデス、騎士団長のギリースとフランクとドメル司祭のみ残した。
・・・何故、無益な話を聞くのだろう
と四人は疑問に思う。
しかし、相手は10人とはいえ。
3人の騎士がいれば充分に対処出来る。
ドメル司祭も精霊の加護がついている。
呪いくらい跳ね返せるだろう。
エリザベスは、辛抱強く10人の話を、聞き流した。
「そう」「そうなのね」
と否定も肯定もしない相づちをたまに打つ。
10人は光悦した表情で、おのおの話をするが
どれも、如何に自分たちがすごいのか、教団は力を持っているのか
そんな話ばかりだ。
・・・私は、古の聖人のように、多数の人の話を同時に聞けるわけでもないのに
エリザベスは心の中で独りごちる。
やがて、2時間を過ぎようとしたあたりに、変化が現われた。
「エリザベス様を、我が教団の指導者にいたします」
「そうすれば勝利です。人生勝利だらけになります」
段々と、彼らから、黒いもやが現われた。
「「「公爵代行様!」」」
・・・この黒いものは、欲望の闇?この世界は思念が現実化するから便利よね。
ああ、これは精神を干渉しようとしている。なら、もっと、深い闇で吸い取ればいい
「・・そうですよ。オリハルコン教団は大陸全土の国から注目されていて、指導者は、この王国や、帝国、聖王国の名誉学位や名誉勲章を沢山、受賞されてます!」
「闇魔法、共食い!」
エリザベスも闇を出す。
10人はエリザベスの魔法に構わずに一心に話し続ける。
あれがエリザベス様の闇魔法
あんな黒、闇の中の闇、見たこと無い。
闇魔法、この魔法と黒髪のおかげでエリザベス様は、魔女と実親に嫌われた。
お可哀想に
と三人の中で、初めてエリザベスの闇魔法を見た若手のギリースは思った。
まるで、水が高いところから低いところに流れるように、黒いもやはエリザベスの闇に吸収された。
「エリザベス様、危険です。悪鬼が、近づいて・・ええい、我が守護たる光の精霊よ・・」
エリザベスは手でドメル司祭の魔法の発動を制する。
・・・あれは、何だったか。思い出すのよ。前世の私。弟は何て言ったのかしら。
『僕は祈ることによって宇宙の真理と一体化する。何でも願いが叶うようになる。ショテンゼンシンが人や社会を動かし、僕を守ってくれる!』
『そ、宇宙の真理が、何故、大宇宙の天ノ川銀河の辺境の地球の高校生の受験を手伝うのかしら?』
・・・
エリザベスは彼らの10人についている悪鬼に語りかける。
「女神は偉大なり、精霊は深遠なり、森神は慈愛なり。酒神は大善なり。ショテンゼンシンよ。お前を叱咤したり、理不尽な願いを押しつける者は我が遠ざけよう。それぞれの宗主の御許に、または、善き人に、好きなところに行くがよい」
そして、エリザベスは悪鬼の闇を吸い取り、悪鬼たちは角が取れ、微精霊に戻った。
微精霊は、クルクルとまるで、感謝するかのように、エリザベスの周りを回った後
部屋を通り抜けどこかに行った。
「その10人は牢屋に入れなさい。記録官を付けて、何が起きるのか記録するのよ」
「「「御意」」」
「私たちを厚遇すれば大陸全土で認められますぞ~」
10人はしゃべり続けながらも、兵士たちに連行され、牢屋に入った。
「公爵代行様、闇魔法による浄化はわかったのですが、ショテンゼンシンとは一体・・」
精霊は大雑把だ。人が付けた名前に頓着しない。
しかし、本質を見抜く言霊を発すると、荒れた精霊は邪気が払われると伝えられている。
「さあ、私にもさっぱりわからない。頭の中に浮かびました」
(嘘は言っていないわ。本当のことをいつか話さなければならないわね・・)
・・・時々、不思議な事をおっしゃる。18歳と言うが、時々老練の政治家と話しているようだ。
それを言ったら絶対に怒るだろうな
と一番古株の護衛騎士は思った。
「邪神ね。聖王国に協力を要請しなければならないかもしれないわね」
☆☆☆人族、魔族国境付近古戦場跡
「貴方たちは、義務を果たしたのです!女神様の元で次の人生の準備をするのです!現世の姿を捨て天に行くのです!
ホーリーミスト!」
15歳くらいの聖女が両腕を上げると、地面から浄化の聖魔法が霧のように湧き上がってきた。
聖女の周りにいたゾンビ化した人族の兵士たちは天に召される。
「「「ウガガガーーーーー」」」
一つ向こうの丘では、ダークエルフが観察していた。
「ハハ、人族の聖女はすごいね。じゃあ、私も」
腕輪や足輪についた鈴をシャンシャン鳴らしながら踊り出す。
「魔族よ。魔族、良くやった。魔神様がお呼びだよ。お酒とお肉いっぱいあるよ~」
音につられて、ダークエルフの巫女を見た元魔族兵のゾンビたちは、力が抜けたように倒れ、体は黒い霧になり、鎧だけになる。
・・・
「ハハ、まさか、聖女さんの隣で、浄化の踊りを踊るとは思わなかったよ。講和っていいね。
それにしても聖女ってすごいね。大戦であんたと会わなくて良かったよ」
「ヌヌヌ、ダークエルフさんはセクシーさんなのです・・私は大戦すら知らずに小国でずっと聖魔法を流し続けていたのです!」
「魔族はにぎやかな方が好きなのさ。あんたの国のこと知っているよ。あの国は聖魔法が充満していて、何かヤダ!で攻めなかったって聞いたよ。でも、あの国、あんたを追放して、今、大変なことになっているって・・あれ?」
ダークエルフは空を見上げた。
「うん?あれは聖王国の空飛ぶ鯨さんなのです。法王猊下か、聖王国の要人が乗っているのです・・何故?」
飛行船が、戦傷地の人族の駐屯地に着陸すると
聖騎士の騎馬が聖女の方に向かって来た。
「聖女ロザリー、法王猊下がお呼びだーーーーーすぐに、飛行船に乗れ!」
「な、なんですとーーー」
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