第3話 認められた冒険者グループ『落ちこぼれの挑戦』
「おい、無能、今日は説法の日だ。お前も来るのだ!」
父に連れられ、教会に来た少女は、いつものように、さらし者にされる。
「我が精霊様は、我に試練を与えたのだ!我が子は無能だった!それは何を意味するのか?我が子でも無能は排斥しなければならない!
我は勝った。何の迷いも無く子の縁を切ったのだ!
我は耐えた。その結果、リアン、リヒトが精霊の愛し子になったのだ!これは勝利だ!」
ワアアアアアアアアーーーーー
「「「大勝利だ!」」」
壇上には、みすぼらしい格好をした少女と、キレイな教団服を着ている姉弟が上がっている。
「あれに触ると悪運を積むが、悪を攻め抜けば功徳を得る!リアン、リヒト頼むぞ!」
「「はい、父上!」」
「ウォターボール!」
「ファイヤーフェニックス!」
双子が少女を脅かすように、魔法を展開するが
(あれ、怖くない。熱いのも冷たいのも・・消せる?)
何となく思って、心の中で、消えて欲しいと思った。
水の球と炎の鳥が消えた。
「「???????????」」
「ハハハハハハハハ、今日は不調のようだ!お前たちは昨日邪教討伐に行っていただろう。そのせいだな。今日は私が特別に披露しよう!」
すかさず、場の空気を読み父は自ら、少女の前に立つ。
「精霊様の忌み子め。我の正義の鉄槌を受けて見ろ!」
ドスンと蹴りが少女の腹に入るが
(遅いし、力が弱い。しかし、いたがった方がいい・・かも)
時間差があったが、少女は自ら後方に飛びうずくまった。
「・・・ハハハハ、これは我がオリハルコン流時間差打撃なのだ!」
「ウグググッ」
と少女はうめき声を上げたが
・・・あれ?イタくない、夢を見てから、何か変わった。お兄さんとお姉さんたちに比べたら、こいつらは何て小さいの。弱いの?
「「「勝利!勝利!大勝利!」」」
☆☆☆屋敷内
「おい、無能、パンを恵んでやるから、薪割りをしな。夕方までにやらないと、このドナ様が直々に折檻をしてやる!」
「・・はい、ドナ様」
とても、少女一人では出来ない。薪の山があった。
・・・ふん。今日は男にフラれたから、無能で憂さ晴らしさね。このドナ棒で気絶するまでなぐってやる。
あいつは精霊様のご配慮で傷の治りが早い。精霊様がイジメるために使わしたイジメ人形に違いないのだからね。
夕方までにといったけど、あいつにはとても無理さね。
さて、まだ、夕方には早いけど、行って・・・・
「・・な、何で出来ている・・」
わずか1時間で薪は全て割られていた。
少女の姿はない。
「だれか、助けたわね。旦那様!」
ドナはザックに報告をしたが
「それどころではないのだ!」
「ヒィ」
一喝された。
・・・王国が本腰を入れてきやがった。公爵家にこの地の接収を命じてきた。
ザックに出頭命令が来た。しかも、平民犯罪者担当の役人がやって来た。
期日までに、出頭しないと即処刑されても文句は言えないだと!
「どこまでも舐めやがって!」
だが、どうしても勝てない相手である。
・・・ここは下手に出てやるか。何、新たな当主は代理で、しかも18歳の小娘というではないか?金を持たせた使者を送るのだ!
☆☆☆冒険者の隠れ拠点
「フフフフフ~~~ン♪今、お粥を作っているからね。少し待っててね」
「フランお姉さん。そのお歌は?」
「あ、これ、お母さんの歌。私のお母さんが料理をしているときに歌っていたんだ」
「お料理ができるまで、外に出ようぜ。地形の見方を教えてあげるよ」
「ダメかな?この子は私と文字の勉強をするかな。絵本持って来たかな」
魔法士が、幼い子用の文字を教えるために作られた絵本を持って来ていた。
「「どっちがいい?」」
「ハンスお兄さん。私、ローズお姉さんと文字の勉強をしたい。ごめんなさい」
「謝ることはないよ。クゥ~~お兄さん。お兄さんって言ってくれた。俺は嬉しい!俺は見廻りに行ってくるぜ」
少女は自己主張が出来るようになり、少しづつ、心を開いていった。
三人は、少女の呼び名を決めていない。無理して、名前を聞き出そうとも思わない。
名を言うことに深いトラウマを抱えているようだ。無理をしてはいけない。
何よりも少女の自主性に任せようと相談した。
「お料理出来たよ。さあ、慌てずに食べてね」
「フランお姉さん。有難う。頂きます・・あれ」
「あら、スプーンが曲がったわね。何故?」
「ごめんなさい!ごめんなさい!」
「怒ってないわ。理由が知りたいのよ」
少女は身の回りに起きた変化を三人に話した。
「少し、楽になったのね。でも、まだ、周りの人に見せてはダメよ」
「うん。フラン姉さん」
「野営用の木のスプーンがあるから、これを使って」
☆別の日、隣領、冒険者ギルド併設酒場
三人は食事をしながら、あの子をどうやって連れ出そうか考えていた。
時間はあまりない。何故なら、
「ねえ。あの子、ひょっとして、聖女のギフトがあるのじゃないかな?」
「私もそう思う。だって、あの子が元気になったら、森に神気が戻ってきている」
「ああ、あの子と結界内を散歩したら、小動物たちが付いて来た。間違いなく、聖女だよ」
「そう、動物たちがまるで、オアシスの水場のように争い無く狼、キツネと兎、リスが、彼女の聖なる気を浴びにきていたかな。私も見たよ」
「じゃあ、最悪、作戦決行日当日までに、連れ出さないと、どうしよう、私たちは『落ちこぼれ』だよ。E級の私たちの話、誰も聞いてくれないよ」
その時、ギルマスが三人を呼びに来た。直々にだ。
「・・・お前らやったな。ハンスが提出した地図を、依頼主がえらく気に入ったぞ。お呼びが掛かっている」
「ハンス、やったじゃない。貴方の地図は最高だよ」
「そうだよ。ハンスの地図は絶品かな」
「ええ、二人がいなければ無理。あそこまで拠点に近づけないよ」
「いいや、三人ともお呼びだ。だが、気を付けろ。ここだけの話だ。気に入らないと平気で殺す。あの暴虐令嬢エリザベス様だ。だが、金払いはいい」
・・・この日、三人は、アレクサンドル公爵邸に呼ばれることになる。
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