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最終話

「・・分かった」


 とアリサは答えた。

 ・・・冒険者稼業もこの子にはプラスにはならなかった。絶望したのね。私には引き留める資格も、止める理由もない。

 しかし・・・


「ローズマリーちゃん・・・何事も順番・・ある。乗って」

「うん」


 アリサはバイクの後ろにローズマリーを乗せて旅立った。

 行先は、公爵領だ。


「最期のご挨拶を、エリザベス姉さんに・・・しよ」

「はい・・」

 ローズマリーは、無心で答えた。もう、この世に未練はない。



 ☆アレクサンドル領、ドングリ良い子孤児院


「エリザベス姉さん・・・来たよ」

「まあ、良く来たわね。今日は、ハンバーグよ!食べるでしょう?」

「・・・ウグ、食べる!」

「ローズマリーちゃんも食べるよね」

「・・私はいい。その食事を誰かにあげてください」

「そう、じゃあ、命令よ。食べなさい!領主命令です。ギリース、もう一人分作るのよ」


 エリザベスは、騎士団長ギリースと伴に、孤児院に慰問に行くことを日課にしていた。


「まさか・・・姉さん。この・・脳筋と・・・考え直した方がいい」

「いいえ。男は真面目が一番ね」

「いや、不釣り合いなのは分かっているが・・そこまで言う?」

「姉さんを不幸にしたら、ぶっ殺す・・・今殺す?」

「だから、何故、すぐに殺す言うの?」

「「「フフフフフフ」」」


 3人の談笑に、ローズマリーは、中に入れない。

 正直、苦手だ。


「・・・・・・・」


「ところで、ローズマリーちゃんに、お願いがあるの。実は・・・」


 エリザベスは、そんなローズマリーを気にして、話題をふる。無理に話題の中にいれるのは逆効果だと、前世の経験も踏まえて判断した。


「近領のイルミー領で、カルト集団が討伐されたわ。そこでね。生贄のされる子供たちが保護されたの」


「そう」


「・・・ご飯が出来るまで、遊んであげてくれないかな。絵本とかあるけど、シスターさんたちにも、心を開かなくて・・・この先を行った突き当りの部屋よ」


「分かりました」


 ・・・正直、他家でご飯をごちそうになるのは、苦手・・・この雰囲気に入れない。 だから、抜け出せてラッキーかもしれない。食事が終わったら、殺してもらおう。

 それまで、子供達には、

 適当に、絵本を読んで・・・


 トントン

 とドアをノックして、入った。

「入るね」


「・・・・・」


 ローズマリーは子供たちを見て絶句した。

 5,6人いるが、全員体育座りをして、うつむいている。


 ・・・これは、あの教団の外の世界を知らなかった頃の私だ。

 今の私には、気に掛けてくれるアリサさんと、エリザベスさんがいるが、

 この子たちには、誰もいない。


 ローズマリーは、無言で、彼らのそばに座る。

 何も言わない。


「・・・・・」


 その様子をこっそり見たアリサは報告をする。


「エリザベス姉さん!ローズマリーちゃんが・・・」


「まあ、これは、上手く行きそうね」


 ☆3日後


 ローズマリーは、子供たちと、ポツリ、ポツリと話すようになれた。


 子供たちの話は、自己肯定感が著しく低い。


「僕たち・・・要らない子だから、悪魔の生贄にされるのが、唯一役に立つと親から言われて」


 子供たちが、自分たちを、否定する話をすると、ローズマリーは、思わず


「そんなこと言ってはダメ!そんなことない!」


 と強く否定した。


 思わずハッとする。


 ・・・これは、フランお姉さんが、私に言ってくれた言葉・・・

 私の中に、あの三人が生きている。


 これからの人生は、三人に親切にされたことを他人にしてあげればいい・・

 それが、私の目標。


「アリサさん・・・実は・・」


 アリサはもういなかった。

 シスターが伝言と資料を手渡す。


「アリサ冒険者殿から、約束は果たせない。その代わり、これを・・との事です」


「これは・・・マジックのやり方?!」


「ええ、異世界で人を楽しませる大道芸のようです。それに、これを」


「おもちゃ、ボールに、ぬいぐるみ?!」


 資料には、異世界・・地球で流行っているマジックの本を、アリサが大陸共通語に訳した記述がある。


「・・・こんなに、細かく書いてある・・・皆、私の力で、再現可能なもの」


「エイ」


 とボールを宙に浮かばせる。

 ヌイグルミを動かす。


「「「ワアーーーーーー」」」


「お姉ちゃん。もっと、見せて!」

「ウワ~すごい!」


 ・・・・


「聖女様、私らの孤児院にも来てください」

「ええ、求める子がいる限りどこにでも行きます。そこが、私の死に場所です」

「「「有難うございます」」」



 ☆後のローズマリー


 王国には、子供の守護神と言われる聖女がいる。

 彼女は、特に虐待を受けた孤児に、マジックを見せ。ヌイグルミで劇をし。

 共に泣き。共に悩み。そして、共に笑ったと云われる。


 慈愛の聖女と言われるようになるが、

 王国、聖王国のいかなる勲章をも嫌って受賞を、断ったのは、父の勲章狂いを反面教師にしたからだと思われたが、


「聖女様、皆で作ったお星さまの勲章です。受け取って下さい・・」


「フフフフ、ええ、有難く頂きます。これは、女公爵様と、アリサさん・・シスター、その他大勢の孤児院運営の協力者を代表して頂きますわ」


「「「やったー」」」


 子供たちからもらった折り紙で作られた勲章を大事に身に着けたのは、特筆することである。



最後までお読みいただき有難うございました。

最終話、お待たせして申し訳ありませんでした。

完全な言い訳ですが、結末を悩みました。


評価して頂いた方、イイねを付けて下さった方、お読みいただいた方、励みになりました。

有難うございました。

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― 新着の感想 ―
これは、絶対泣くやろ。二回目読むのは難しいくらい感動した。
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