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第1話 精霊の儀

☆砦の惨劇より10年前



「さあ、お嬢様、おめかししましょう。どのリボンになさいますか?」

「ドナ、このピンク!」

「畏まりました」


「姉上、キレイ、いいな。私も着たいな」

「姉様、似合ってます」


「フフ、リアン、リヒト、有難う。あなたたちは来年よ」


 この土地では、5歳の誕生日月に精霊教会に行き精霊の像の前で、儀式を行い相性の良い精霊と契約をし、魔法を使えるようにする。

 契約が出来なくても問題はない。平民は魔法を使えない。上流階級でも魔法を使えない者がいる。

 しかし


「ザック様、大精霊様は・・・お嬢様を拒否なさいました。お怒りです。無能です」


「な、なんだと、契約をなさらない場合は、静かに去られる大精霊様が、お怒りだと」

「司祭殿、もう一度」


「もう一回は危険です・・・精霊様は低能ならお許しになりますが、無能はお怒りになります。無能は低能未満、連続で儀式を行うのは危険です」


「旦那様、私は浮気などしておりませんわ。何かの間違いです。まだ、双子がいます」

「わかった。もういい。お前との離縁は、リアンとリヒトの来年の儀式の次第だ。それまで保留だ」

「旦那様・・ウウウ」


 儀式の途中に、部屋の中に嵐が巻き起こっていた。教典は飛び。イスは横に動くくらいの激しい動きだ。


 像からは、「ボーホーホーボーー」と奇怪な音が発している。

「キャアアアアア」

「お嬢様、こちらへ」

「はい」

「まあ、お嬢様、嵐の精霊様が来られたのかしら、このドナ、鼻が高いです」

「・・・ううん。何か違う・・」


「お父様、お母様、儀式は終わりました。司祭様はなんて仰ったのですか?私と契約された精霊様は?」


「「お前は、私たちの子ではない!」」

「えっ」


「馬車に乗るな!歩いて来い」

「えっ、お父様、お母様、私、悪い子をした?」


「ああ、とっても悪い子だ。いや、私の子供ではない!悪いゴミだ!」


 ・・・

 5歳の子が、四時間かけて、歩いてようやく屋敷に帰ってきた。


「あれ、ドナ、私のお部屋が空っぽ。お人形さんとヌイグルミちゃんと絵本は?」


 パチン!といきなりビンタをされた。


「この無能が!呼び捨てをするな!ドナ様とお呼び。み~んな捨てたさ!お前の部屋はないよ」


「えっ、えっ」


「ホラ、エサだ!」


 四時間前まで、「お嬢様」と呼んでいたメイドの豹変ぶりに理解が追いつかない。

 床にビスケットが投げられた。


「え、こんなの食べられないよ。お腹すいたよ」


「フン」

 ドナは足でビスケットをゴリゴリと踏みつけた。


「エエエエ~~~ン」


 更に妹弟たちにも、教育が施された。


 無能判定を受けた少女は庭木に縛られている。


「あれは大精霊様のお怒りを買ったゴミだ。ゴミには石を投げるのだ!」


「お父様、こんなの酷い」

「父上、やりすぎです」


「ほぉ、じゃあ、無能の代わりになるか?夜は家畜小屋だぞ」


「ウ、ウウウウウ、リアン、リヒト、ウワーーン」


「ロ・・ウグッ」

 弟が姉の名を口に出そうとした瞬間、父が手で口をふさいだ。


「名前を言うと大精霊様が怒る。あいつを呼ぶときは、「あれ」とか「これ」にしなさい。いいね」


「「は、はい」」


 双子の弟妹たちは、渋々石を投げた。

((お姉様、ごめんなさい))



 ☆1年後、精霊教会の儀式


「やったぞ、二人とも、精霊の愛し子だ!やったな!お前良く生んでくれた」

「旦那様、それでは?」

「ああ、離縁はしないぞ!」


「あれは何かの間違いだったのだ!」

「旦那様、そうですわね」


「今日は祝宴だ!」


「「有難うございます。お父様」」


「そうだ。明日から魔法教師を呼ぶ。「あれ」を標的にしなさい。精霊様の捧げ物にするから、殺しちゃだめだよ」


「「はい!」」


 ・・・


 今まで同年代で一緒に遊んでいた家臣の子供たちも、彼女に対して、バカにするようになった。


「おい、無能!この単語読んでみろよ~」

「計算してみろよ」


「習ってないよ」


「俺たちは低能だ。敬語で話せよ!」

「私は有能よ」


「「「ギャハハハハ、無能は頭も悪いな!」」」


「ウワーーーーン」


 学習の機会を奪われたので、少女は知らなくて当然だが、周りは知能が低いとみなした。



 ・・・

「お嬢様、あんまりです。さあ、パンとミルクです。ここでお食べ下さい!」

 少女の境遇に同情したメイドの一人が、彼女に食べ物を渡した。


「有難う。ルナ。グスン」

「さあ、見つかったら大変です。お急ぎ・・」


「おい、ル~ナ、無能に優しくしているとは!旦那様に報告だ~」

「ヒィ、ドナさん、この子は可哀想すぎます。見逃して下さい」


 ・・・


 メイドは裸にされ、立木に縛られていた。

 周りには使用人たちが集められていた。


「ヒィ、お許し下さい!」


「おい、無能、このメイドが悪に染まったのはお前のせいだ。だから、お前が輪廻させるのだ!」

 父親が、少女に剣を渡す。


「ヒィ、出来ません。ルナを許して下さい!」


 ドカ!

 と蹴りが入る。


「ウグググッ」


 ドカ!ドカ!


「ふん、お前がこのメイドに少しでも剣を差したら、待遇を良くしてやる。やれ」


「ウエエエエエーーーン、ヤダよ」


「なら、仕方ない。お前のせいであの女は死ぬのだ!自分の責任を取れないとは、やはり、無能だ!」


「リアン、リヒト、良い訓練になる。お前たちが手本を見せるのだ!」


「「はい、父上」」


「やめてあげてててぇえええええーー私を殺せばいいでしょーーーーー」

 少女の叫びが木霊した。


 ・・・


「おい、あれ、僕たちが処理をした。礼を言え」

「そうですわ。出来損ない以下の無能のためにワザワザ貴重な時間を使ったのだから土下座してお礼をいうのが無能の正しい心得だわ」


「い、いやだ」


「じゃあ、ウオーターボールで窒息の刑♪」

「私は火球を作って熱くするわ。お前は冷たいのと熱いの両方受けるの。ウケる~」


「姉上と僕とで、蒸発と消火どっちが早いか競争だ!」

「負けないわよ」


 少女の顔が水の球で覆われ、水の球は氷になった。更に炎の球を近づけられる。

 氷は溶け、また、氷になるのが繰り返される。


「ギャアアアアアアアア、私は貴方たちの姉よ・・」


「「生意気」」



「ポーションを置いてくのだ。死なない程度に反省させるのだ!」

「「はい、父上」」



 そして、誰も少女を助けようとする者はいなくなった。

 彼女も他人と関わろうとしなくなった。






最後までお読み頂き有難うございました。

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