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第17話 貴族は二枚舌

 アリサは、視線を感じていた。

 地下からだ。誰かが、様子を伺っている。


 ドサ!


 地面に設置されている地下壕の入り口が開いた。


「はあ、はあ、良くやった。化け物を始末してくれて礼を言う。私は、オリハルコン教団のザックだ!冒険者の女、オリハルコン教団栄誉勲章を授けよう!」


 少女の父、ザックは、地下壕に避難していた。


 ・・・言葉が通じなさそうね。

 ごめんね。ローズマリーちゃん。少し、地面に置くよ。


 アリサはカバンからポンチョを取り出し、地面にひいて、優しく少女を寝かせた。


 ザックは両手を広げて、アリサに近づく。


「さあ、私の妻にしてやろう。化け物よりも強い子を産んでくれ!言うことを聞く子だぞ」


 こういった場合、加減が難しい。

 さて、どうやって、殺さないで痛めつけようかとアリサは思案した。


 その時、

「突入!」


 エリザベスの親衛隊が、砦に突撃した。


「貴方たちが、これ以上、手を汚す必要はないわ。こいつを捕まえて」


 エリザベスは、ザックの捕縛を命じる。


「おい、ダグラス様を出せ。本物の公爵を出せ!」


「もう、元公爵よ。そして、貴方は、何者でもない平民よ。無礼ね。貴族に対する不敬罪ムチ打ち10回。この子の見えないとこで、執行しなさい」


「「畏まりました」」


「ヒィ」


 ・・・・貴族籍を調べたら、この子は、前のアップルフィールド伯爵の養子になっていた。

 祖父母の養子。

 母、サロメは、学園在校時に妊娠。子供を置いて、父親のザックの元に出奔した。

 ローズマリー。可愛い名前ね。きっと祖父母は愛情を持って育てていたのね。


 祖父母が病死した後、サロメはザックを連れて帰って来た。ローズマリーが唯一の血統だから、領の外に出ないように洗脳していた。形の上では、ローズマリーが当主、サロメは不行跡で貴族籍抹消だった。

 やるせない。嫌いなら他の土地の親戚に預ければいいのに。


 次々と制圧の報告がやってくる。



「エリザベス様、各村の教団兵鎮圧完了」

「屋敷街占領完了・・・死体の山です」


 しかし、アリサは、ローズマリーを抱えて、守りの姿勢を取っている。臨戦態勢だった。


 まだ、ローズマリー抹殺命令は生きている。


「さあ、アリサ、この子に温かいご飯と、安全な寝床に招待するわよ」


「こ、殺さない・・・の?」


「ええ、貴族は二枚舌なのよ。それに、口答の命令だから、文書にしてないわ。それに・・」


 ・・・この子が暴走したら、私が止めれば良いと言えば家臣達は動揺する。

 不遇の父親を持った者同士・・・いや、この子の方が比較にならないわね。


「エリザベス姉さん。わ、わたし、抱っこして連れて行く・・よ」

「ええいいわ。でも、バイクはダメよ。馬車を用意するから一緒に行きなさい」

「モチ!」




 ☆☆☆数日後


「え、分かりました。良いでしょう。棄教します。苦渋の選択です」


 ムチ打ちで服が破れ、肌が痛々しく露出しているザックは内心喜ぶ。


 今回の処置は、エリザベスの父、ダグラスが絡んでいるので、二度とオリハルコン教会を作らないこととなった。棄教である。


 聖女ロザリーは、ザックに浄化の聖魔法を掛ける。


「ホーリーミスト!」


 ザックの周りに付いていた精霊が浄化され元の姿に戻る。

 そして、ザックは放逐である。


 ・・・さすが、聖女様、一声で全ての精霊を元の姿に戻したわね。


 あの日、私は10人の教団副会長を闇魔法で浄化した。

 彼らを牢に入れ、観察を命じた。

 そしたら、その日から、食べ物に不浄物が混じるようになった。

 彼らはおかしくなって、数日後亡くなった。

 魔導師の意見では呪いの一種と言ったわね。


 ☆回想


 前世で、私が飼っていたインコが亡くなった。

 私はピーコちゃんのために、手を合わせて祈ったら、


『ナンマンダーナンマンダーナンマンダー』


『ちょっと、それを唱えるのは、飯にクソを混ぜる行いって教典に書いてある。唱えるのやめろよ。姉さん!』


 弟はそんなことを言っていたわね。

 あの教団員と同じことが起きた。

 まあ、偶然でしょうけども。


 ☆


 精霊像は、鉛の箱に入れられ、聖王国の飛行船で人がいない極北の地まで運ばれる。


「精霊像を壊しても、思念は残るのです!そして、どっかに宿る危険があるのです。鉛の棺に入れておけば、5000年で半減するのです」


(放射性物質かしら)


「待って」


 エリザベスは、精霊像の顔のホホに手を添えて、一言つぶやく。


「タロウ・・」

「もう、いいわ。有難う。フタをして頂戴」



 エリザベスは精霊像と前世の弟が重なって仕方なかった。





最後までお読み頂き有難うございました。

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