第10話 惨劇 ③ 狼煙
少女は力で穴を掘ると、あの三人を守ろうとしたキツネやイタチを一体づつ丁寧に埋葬し、鳥たちが花を口にくわえて持って来る。
その様子を肉食獣たちは襲わずに見守っている。
「フフフ、貴方たち、有難う。名も無き我が忠実なる従僕たちよ。安らかにねむれ。私は約束するよ。森の恵は・・・エイ!」
少女がかけ声をあげると、少女を中心に、そよ風が起こり。森の草木に生気がみなぎり、実がついていく。
・・・な、何だよ。これ、大聖女レベルじゃないか?大聖女が殺戮を・・こんなお宝がねむっていたなんて。
少女は最後に、大事な三人を埋葬する。
力で穴を掘り。
ハンスを中心にローザとフランの亡骸を並べ、手をつながせる。
「フフフフ、ハンスお兄さん。両手に華だね」
そして
・・・何だ。こりゃ、まるで、普通の少女のように、花を摘んでやがる。
狂っている。あれだけのことをしていて、普通すぎて、逆に・・・・・
怖い!震えが止まらない。
花を手向け。土を被せて、丁寧に祈った。小1時間ほど祈った後
「さて、お前、外のことを話しな。話している間は生かしておいてやる」
「大聖女様、傷が痛くて、集中出来ません。是非、治療をして下さい!」
「あ、そ」
パン!
「ギャアアアアアア、何故、残った腕まで爆発させやがった。いや、何故でございますですか?」
「痛かったら、更なる痛みで忘れればいい。次は足かな」
「話す!話してごらんにいれますデス。話させて頂きますデッス。イケメン吟遊詩人から王子様のことまで、このファルコン、お気に召す情報は何でも話してご覧にいれますデス!」
少女は、この領の外での動きを聞いた。
何故か知らないが、『エリザベスお嬢様』が私に懸賞金を掛けて、連れ出そうとしていることはフランお姉さんから、聞いた。
外と戦争、近づいている。
何故、こいつらが、拠点を知ったのか。
・・・ローザお姉さんの隠蔽魔法がこんな奴らに見抜かれるハズがない。
わかりやすい地図を作ったハンスお兄さんが優秀すぎるから・・
そうか。だけど
・・・どうでもいい。そんなことで、大事な恩人が殺された。
「はあ、はあ、知っていることは、全部話しましたデス。次はあっしのプランをお聞き下さい!あっしはB級デス。役に立ちます。名前をお聞かせ下さい!いやなら、取りあえず『お嬢とファルコンの両雄』という名にいたしましょう!腕を治療して下さい。血が流れて、目眩がします。お願いします!」
まだ、この局面で、欲だけで人が動くと信じて疑わないファルコンは必死に少女の心の琴線にふれる言葉を発しようとするが、
「人間ってどこまで飛ぶのかな。エイ」
「えっ」
ファルコンは直線で空を飛び。150メートルあたりで、草原に落ち。転げ回り木にぶつかり止まった。
「グハ、ウゲ」
「ふ~ん。高く飛ばしたら、もっと、飛ぶのかな。灰色熊ちゃん。あれ持って来て」
「ガオ!」
熊にくわえられ、更に傷を負いファルコンは少女の前に連れて来られた。
「ヒーヒー」
もう、ファルコンの口は回らない。
また、何かに引っ張られるように宙に浮く。今度は、高く弧を描き。遠くまで飛んでいった。
「なるほど、投擲は弧を描くようになげるのね。ローザお姉さんのお話通りだった・・」
数回実験をしたが
ファルコンは2回目の投擲で既に絶命していた。
「我が従僕たちよ。自然の摂理に帰れ!」
少女が命じると
肉食獣と、小動物たちは踵を返し。森の中に消えていった。
☆
少女は、彼らからの贈り物を丁寧に、並べていた。
「お洋服に、靴に、バック、そして、絵本・・・グスン」
今までの服を脱ぎ捨てて、服を着る。文字、計算教習用の絵本をバックに詰め。靴を履き替える。
「・・これは、ローザお姉さんの付与魔法で丈夫になってる・・あれ」
フランのスカーフが落ちていた。
あの惨劇の時に、落ちたのだろう。
少女はスカーフを首に巻いた。
「形から入れっていうけども、これで、フランお姉さんの明朗さと聡明さは手にはいったかな」
一方、宙に浮かんでいたオリハルコン教団の指導者は、寒さに震えていた。
「何だ。いつまで私を放っておくのだ。オリハルコン教団栄光勲章をもらった私を無下に扱うとは、下におりたら、説教、いや、真の大精霊様の愛し子様だから、丁寧に年上を敬わなければならないことを説明して差し上げあげなければ・・」
「あれ、移動しているぞ!お屋敷の方だ。そうか。私に真の大精霊様の愛し子になったことを報告して欲しいのだな!」
しかし、少女は
「うん。お話に聞いた花火って、こうだったかな。これが復讐の狼煙になるの。あいつは花火になるの・・力が届かない。爆発した後、投擲すればいいかな?エイ」
隊長が皮算用していたとき、体が爆発した。
バン!
「あれ、体が・・無くなって・・」
・・・お前は花火になるの。復讐の狼煙になるの。
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