プロローグ
「お、お、お嬢さん。ほら、いっぱいお菓子あるよ。それとも、お食事がいいかな。あっちに行けば、お食事できるよ。お肉たっぷりあるよ」
「我等の仲間になってくれ。そうしたら、ドレスが注文し放題だ。絵本も、お人形も、ヌイグルミも沢山プレゼントしてあげるよ」
「そうだよ。俺たちと一緒に悪い奴をやっつけようぜ」
数人の兵士が鎧を脱ぎ武器を携行せずに、三人が一人の少女の前に現れた。
兵士たちは緊張している。
一人は両手を挙げて話しかけている。
一人は軍旗を恭しく畳んで掲げて持って来ている。
一人は、籠を両手で抱えており。その中にはわざとらしく急遽集めたお菓子が入っていた。
この隊旗とお菓子の貢ぎ物を少女が受け取ると、彼らの仲間になると承諾することになる意味合いである。
「ふ~ん。だったら、お願いがあるの」
兵士たちは喜びを隠せない。顔が明るくなった。
「「!!!」」
「ああ、聞こう。聞こう。是非言ってくれ!」
「え~とね。その薄汚い声が嫌い。死んでくれないかな?」
「「「・・ええ」」」
「そう、なら、私が殺すよ」
「「「ギャアアアアアアアアーーーーー」」」
数人の兵士の体が一瞬で霧散した。
それを近くの砦から、指で輪を作り、その中から望遠魔法で確認していた兵士が、上官に報告した。
「ダメです。化け物の取り込み。懐柔、失敗しました」
「チ、あの化け物、知能低いのではなかったのか?我等の戦力にならないのなら、抹殺をする。
・・・チ、つくづく、無能だ。折角、精霊様の加護が付いたのに、輩を殺しまくるとは、
「時間を稼げ。まだ、砦に近づけるな!」
・・・
ドンドンドン、
「合図だ!弓を射ろ」
「ダメです。遠距離射撃の弓の雨・・・矢が空中で止まってます」
「重力魔法か?化け物は詠唱していないだろう!」
「ああ、歩兵隊と接触します」
「あ、あの化け物は縮地も使うのか?」
「フフフフフ~~~~ン♪遅い。遅いよ-」
「ウワワワワーーー突撃!ギャアアアアア」
「腕が、腕がちぎれる!」
「魔法兵!どうした!」
「ファイヤーボール!ギャアアアアアーーー」
「ギャアアアアーーーー」
・・・ああ、何て簡単に死ぬの。弱いの。こんな奴らが親切な村人を、私を虐げていた。嫌になる。こんな遅く、弱い奴らに、大事な人が
―――――――殺された。
「ファイヤーボールの軌道がおかしい。化け物をさけてやがる。しかも、魔法を放ったら、次の瞬間、四肢が切断されている・・・フードの魔法兵が・・全滅だと」
・・・
「野戦で、兵士の前半分の列が全滅、残りも・・今、全滅しました」
「ええい、生き残った兵士にかまうな。吊り橋をあげろ!大規模魔法の準備は?」
「はい、もうすぐかと、城門の前100メートルが、爆裂魔方陣のど真ん中です!」
・・・
「フフフフフ~~~ン、フン?吊り橋が上がった。遅い。遅い。判断も遅いよ。死体投げ新記録行くかな?そりゃーーーーー」
彼女の周りの死体がゆっくり浮かび上がって、次の瞬間、ものすごい早さで飛んでいく。
「ウワーーーー、兵士の死体が、城内に雨のように降ってくる!」
「ば、化け物が来たぞ!ヒデェ、同志の死体を投げてやがる!」
「き、鬼畜だ」
「「「ウワーーーーーーーー」」」
「隊長、魔導師の詠唱が、死体投擲で崩れました。半数以上死亡!再構築不可能とのことです」
「門が崩れた。ええい。弓隊はさっきから、何をしている!」
「!!隊長、死体投擲で、殺されています・・もう、部隊活動不可能です。9割以上が死にました」
「化け物、堀を飛び越えて、中に入ってきました!」
「た、助けてくれ、降伏する!」
「ねえ。なら、私の名を教えて・・私の名を取り上げたのは貴方たちよね」
・・・名前が思い出せない。誰も呼んでくれなかった。
呼ばれたい人は、もうこの世にはいない。
「お、俺たちは一般兵だ。何も知らなかった!」
「貴方様のお名前は、リーサ、アン、トム!」
「ええ~トムって男の名だよね。それくらいわかるよ。嘘つきは死んじゃえーーーー」
「「「ギャアアアアアアアアア」」」
「なあ、聞いてくれよ。俺には家族がいる・・」
「へえ。そうなんだ。私は家族を殺したよ?不幸だね。だからお前ら死んじゃえ!」
「「「ギャアアアアアアアアア」」」
・・・
「化け物、すでに砦内に侵入しました。降伏した兵を殺戮中です・・」
「隊長、砦放棄の合図を出しましょう!」
「タワケ、ワシが逃げ、転進する時間稼ぎをさせるのだ!お前たち、護衛を連れて来い。馬の準備をしろ。ワシは後方に下がって、再起を図る。急げ!」
「「・・・・はっ」」
((もう、こいつの下で働くのは無理だ。逃げる!))
・・・ええい、時間稼ぎで野戦に撃って出て、投げる死体を量産させたことが、裏目に出たか。
化け物は、どうしたらいい。
どうして、こうなった。あいつは、あいつは
「無能ではなかったのか?」
最後までお読み頂き有難うございました。