お互いのために
「そんなことないわよ」
パメラは自信を持って即答した。
実際、彼女は危険なことをするつもりはなかった。うぬぼれや錯覚ではなく、客観的にも安全だと自信できた。もしバレても……せいぜい皇女として立場が苦しくなる程度に過ぎない。
アレクの視線は厳しかった。アレクにまで隠すほどのことではなかったので、パメラは率直に話すことにした。
「実は皇居で必要なの」
「皇居で? なぜ?」
「去年禁書庫に入ったのがバレたみたい」
「……は?」
最初は気にしなかった。
皇居には歩哨とパトロールを担当する衛兵たちが常駐する。その光景はパメラにとって平凡な日常だった。そのため、最初は特に違和感を感じなかった。だが数日が数週間になって数ヶ月になり、パメラは皇居が以前とは変わったことに気づいた。
最初はただ衛兵の数が増えたと思った。しかしある日、パメラは増えた衛兵の動線から一定のパターンを発見した。彼らはまるで禁書庫に接近する経路の隙間を遮断するかのように配置され動いていた。
禁書庫の魔法も補強された。しかも皇居内で魔法を使う時の感覚自体が違っていた。魔法を遮断するわけではなかったが、誰がどんな魔法を使うかを感知するシステムが非常に強力になった。禁書庫の魔法に変化があることを知る時、遠くから探知魔法を使っていた。かなり強力に隠蔽したと自信があったが簡単にバレて軽く追及された。
それらを整理して話すと、アレクは眉をひそめた。
「皇居内の警備が強くなった感じはあるけど、それだけで禁書事の件がバレたとは確定できないだろ」
「それだけじゃないわ。父上も言った」
パメラが探知魔法で禁書庫の魔法を調べてから数日後のことだった。パメラがアディオンと話している間に突然彼は言った。『時には光の女神でない他の存在の言葉からも学ぶことがある』と。
あまりにも突拍子もなく、脈絡もおかしい発言だった。しかも光の女神パルマを否定するような発言のようだった。パメラは突然彼がなぜそのように話したのか考え、パルマと同格の存在とやり取りをしたり関連資料を見たことを指す発言だと考えるに至った。
「百パーセントじゃないわ。でも可能性はかなりあると思ったわよ。それにそうじゃなくても、最近皇居の警備は気になるわ。その中で自由に動く方法も必要だし、警備自体について調べて対策を講じたいの」
全く皇女らしくない発言だが、彼女の目的である復讐を考えれば理解できる発言でもあった。アレクは物思いにふけった。
パメラが危険ではないと断言した理由はわかった。皇女の彼女が皇居の中で使うものだから、よほどのことではなければ問題にならないだろう。何か決定的なことをしようとする状況でなければ、バレても子どもっぽい行動だと思われて叱られる程度だろう。
パメラの目的と手段について言いたいことはあるが、アレクは彼女の目的を否定しない。ただ心配なことはあるが。
「あえてお前が直接そんなことをする必要はないだろ」
「その必要がいつどんな形で生じるか分からないわね。禁書庫への用事もまたできるかもしれないし。この前は実際に使わなかったけど、詳しく調べたいことをいくつか発見したわ」
「やめろってことじゃない。あえてお前がする必要はないという意味なんだ」
アレクは自分の胸に手を置いた。
「俺は貴方の騎士だ。お前の手足になって動く者だし、調査や捜索は本来俺の役割だ。だから必要なら俺に任せてくれ。皇女であるお前が危険を冒す必要はない」
「大丈夫。危なくないわよ」
「知らないことだ。もしかしたら思いもよらないところで足を引っ張られるかもしれない。たとえバレても皇女のお前なら大きな危険に陥ることはないだろうが、お前の評判に影響が出たらお前の目的も妨げられるかもしれない。それはお前も望んでいないじゃないか?」
「それはそうだけど……」
それでもパメラは楽観していた。皇女だからではなく『万能』の適性者である天才魔法使いとして。
皇居の警備や魔法が強化されたのは事実だが、パメラはある程度までならバレず歩き回る自信があった。いくら転生者だとしても、前世の記憶を思い出す以前を除けばまだ三十年も生きていない魔法使いとしては危険な発想だ。しかし、彼女はそれを知りながらも自分なら可能だと確信していた。
もちろん、パメラが直接学んで行おうとする理由は、その楽観のためだけではない。
「私はバレても大丈夫。せいぜい叱ったり懲戒で終わるから。それよりひどい罰を受けるようなことはなるべくしないだろうし。でも、貴方が私の代わりにそんなことをしてバレたら大変じゃない」
アレクがパメラの指示を受けたとはっきり言えば大丈夫かもしれない。しかし、そうなればパメラは自分に従う騎士に不審なことをさせた皇女になる。直接潜入してバレるよりもっと悪い評価を受けることになるだろう。それを心配したアレクがその事実を隠せば、彼の責任は重くなる。
パメラはそれを言った。
「そうなるなら、私が最初から最後まで責任を取った方がいいわ。私のせいで変に誤解されたり罰を受けたりするのは嫌よ」
「勘違いするな。俺はお前の騎士だ。お前を守る者であって、お前に保護される者ではない」
アレクの目はとても真剣だった。パメラはその真剣さにしばらく目を奪われた。だがアレクは彼女の気配に気づかず、ただ熱い口調で話し続けた。
「俺たちの主従関係はお前が提案して始まったんだな。でもお前と一緒にいて、貴方を守ると決めたのは俺だ。俺はその事実に誇りを持っている。だから些細なことでもお前が負担を負う必要はない。何があっても、どんな負担をかけても俺が耐えるんだ」
「うん……」
パメラは目をそらしたまま、額をアレクの胸に当てた。
アレクの言葉に答えたいことは多いが、一つも口から出なかった。唇は音にならない言葉をモグモグするだけで、なぜか顔が熱かった。そしてその熱くなった顔をアレクだけには見せたくなかった。
「うん」
その短い言葉にどれだけ感情が入っているかは伝わらないだろう。
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