探索
[やっぱり貴方もそう思うわね。わかったわ。とりあえず『地の妖精』をずっと追跡して]
アレクは指示通りに尾行を続けた。
『地の妖精』の動線は一直線ではなかった。途中で出会う人が何人かもっといて、彼らともケルシードやロナンとのことと同じ行為を交わした。彼らはアレクと親交がないが、彼らの顔だけはアレクも知っていた。全員政治的な立場が高かったり野望のある家の子どもたちだった。アレクは彼らの顔ぶれを覚えておいた。
『地の妖精』を追跡してみると、ますます他の『地の妖精』たちとも出会うようになった。集まって同じ所に向かうようだった。だが『地の妖精』が集まる所は学園の中でも茂みに隠された所や建物の影など人の気配がない場所だった。
[『地の妖精』がどんどん集まってる]
[ずっとついていけばあいつらが急にいなくなるよ。それを確認してくれる?]
セイラの頼みだった。アレクはいなくなるという言葉に眉をひそめた。セイラが言った地点が『地の妖精』たちの帰還地点かもしれない。
セイラが言った地点は間もなく確認された。
[見つけた]
『地の妖精』たちの行列が突然切れる地点があった。まるで見えないドアに次々と入るように、奴らの姿が消えていた。アレクはそれが空間転移であることにすぐ気づいた。
ただ、奴らが消える地点は一ヵ所ではなかった。注意深く見ないとあちこちで不規則に消えていくように見えるだろう。消える場所も茂みの中や暗くて陰気な所など、ただ見えなくなっただけだと言っても信じられる場所だった。しかし、ずっと場所をチェックしたアレクはただ消える地点が数ヵ所であるだけで各地点の座標は決まっていると判断した。
[どうやら『地の妖精』たちが空間転移で消えているようだ。消える場所はいろいろあるけど一定だな。主人のところに行くのか?]
[多分そうじゃないかなって思うんだけど。セイラ、『カガハナ』の設定ではどう?]
[『地の妖精』の主人が奴らを呼び集めて可愛がるシーンと奴らがどこかで急に消えるシーンがあったよ。その二つのシーンが繋がってはいなかったけど、おそらく集結させて情報を集める時があるでしょ]
アレクは自分が持っている魔道具を確認した。生徒として通学中ではあるが、彼は厳然たる騎士見習いだ。学園でも騎士科に属しているし。そのため、騎士として持つ最低限の魔道具は常に持参している。
[空間転移なら魔力の跡が残るだろ。魔力を記録する魔道具を持っているから、それで魔力の跡を記録して転送する]
アレクは『地の妖精』たちが消える地点の一つを選んで接近した。魔道具を起動すると、すぐに何かが記録され始めた。彼はその魔道具を解釈する方法を知らないが、資料さえ送ればパメラが解釈できるだろう。
しかし、実際に資料を受け取ったパメラの反応は良くなかった。
[うーん……難しいわね。当然のことだけど、かなり複雑な撹乱と隠蔽の魔法がかかっているわよ。これは魔法能力よりは暗号解読の知識が重要なのよ。私は解釈できないわ。カーライルならできるはずだけど、時間はかかると思うわ。セイラ、貴方はどう?]
[私も同じだよ。暗号解読なんて習ったこともないし、『神聖』はそういうのと何の関係もない適性だから]
[仕方ないわね。アレク、もう戻ってきて]
パメラはそう言ったが、アレクは黙って立っていた。彼の視線は『地の妖精』たちが消える地点に固定されていた。声だけで通信するパメラにはその姿が見えなかったが返事がないということが気になったのか、パメラが再び声をかけてきた。
いや、かけようとした瞬間にアレクが先に思念を送った。
[どこに行くのか分かる気がする]
[え? どうやって? 貴方を無視しているわけじゃないけど、貴方も解読が上手なタイプじゃないじゃない]
[かすかだけど隠れた魔力の流れが感じられる]
パメラが息を呑む気配が伝わってきた。
アレクは純粋な人間ではなく半魔族だ。そして魔族は強力な魔法能力を持って生まれ、魔法を使う力だけでなく魔力を感知する感覚も発達している。少なくとも騎士見習いが所持するレベルの魔道具などよりはるかに優れている。半魔族のアレクにもその体質はある程度ある。彼なら魔道具では見抜けなかった撹乱と隠蔽を見抜くことも可能かもしれない。
[確実ではない。俺にもかすかに感じられる程度なんだ。でも、ある程度推測はできると思う]
騎士でパメラの護衛として、学園敷地内の地理情報は全部アレクの頭にある。アレクはその情報を魔力の方向と照らし合わせ、数匹の『地の妖精』を集結させても目立たない場所を考えた。条件に合う候補地は多くなかった。
[候補は二ヵ所くらいか。どうしようか? 今すぐ潜入してもいいし、使い魔を送って偵察してもいいんだ]
アレクは候補地の座標と場所についてパメラに説明し、意見を述べた。パメラはセイラと一緒に悩んでいる様子だった。
[アレク、貴方はどうしたいのかしら?]
[直接潜入して自分の目で見た方が確実だと思うけど]
[でも危ないんじゃないかしら? セイラ、どう?]
[危険性そのものだけは大きな問題はないでしょ。もしアレクのことがバレちゃっても命に別状はないはずだから。精神操作系の魔法でアレクを洗脳したり操縦しようとすることはできるはずだけど、アレクは半魔族だから抵抗力も高いうえ、パメラ貴方の能力なら十分解除できるよ。ただ……]
[相手を注視しているのがバレちゃうわね]
[そうよ。あっちも私たちのことを警戒するようになるよ]
パメラはしばらく悩んだ。しかしその時間は長くなかった。
[魔法転送魔道具は持っているわね?]
[もちろん]
[じゃあ行ってみよう。バレてもなんとかできるわよ]
言葉が終わるやいなやアレクの周りに魔法陣が現れた。魔力が彼を包んだ直後、彼の姿はそこから消えた。
魔力のかすかな振動を感じた一匹の『地の妖精』が首をかしげるだけだった。
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ちなみに、アレクの話し方が一定でない問題に気づきました。
第2章が終わった後、最初からアレクの話し方を改稿する予定です。
不便をお掛けして申し訳ございません。




