ロナンの過去
「今後? 何か問題あるの?」
「……多分だけど」
セイラの答えは曖昧だった。
パメラは眉をひそめた。セイラが意図を隠すはずはないが、彼女がこのようにためらう時は時間がかかる。こんな時は催促してもあまり役に立たないので、セイラが言ってくれる前に『カガハナ』のことをしばらく考えた。
『カガハナ』の内容はセイラが詳しく話してくれた。しかもすでに過ぎ去った過去になった第一作目の内容まで。そんな彼女なので、第二作目の内容もかなり詳しく教えてくれた。その中にはロナンに関する内容ももちろんあった。
しかし、そこに異常なことは特になかった。ロナンにどんな過去があり、それによってどんな人間になり、攻略のキーワードは何だったのか。その内容を考えるとロナンの今後について問題になるようなものは見当たらなかった。
彼のルートでは。
「攻略されていないロナン様のことを考えたの?」
パメラは思わず呟いた。セイラは驚いて彼女を振り返った。しかし、すぐ苦笑いしながら頷いた。
「そうよ。ロナン様のルートではロナン様も救われたけれど、ルートでないときは結局何一つ変わっていないから」
「やっぱりそうだったわね」
セイラが過去に話してくれたのは『カガハナ』第二作目で各攻略対象者のルートの内容。自分のルートが始まっていない時の攻略対象者に関する内容はなかった。そして今、セイラは万が一の世界の強制力を憂慮して攻略対象者との接触を敬遠している状況。このままでは誰のルートも始まらないだろう。すなわち、すべての攻略対象者が攻略されない。
大半の攻略対象者は自分のルートでない時は大きな存在感がないと言っていた。それでも一人は他の攻略対象者のルートでも大きな役割を果たしたが、それはロナンではない。だからセイラも特に話す必要はないと思っていたんだろう。しかし、今のセイラが攻略対象者の今後を心配するなら、攻略された時より攻略されなかった時の話である可能性がある。パメラはそう思った。
その考えは的中したようだが、一つ理解できないことがあった。
「貴方は攻略対象者たちのことが嫌いじゃない?」
「それはそうだけど、だからといって救われず悲しい人生を生きるのを見たくはないよ」
セイラはそう言ったが、パメラは疑わしがる目で彼女をじっと見つめた。アレクも何かを感じたかのように、似た視線でセイラを眺めた。セイラはその無言の圧力に結局屈した。
「うぅ、本当に容赦ないよね。……ロナン様のことはそんなに嫌いじゃないよ。いや、正確には嫌がるのは可哀想だと思ったというかな」
「どうして?」
「ロナンさんがどんな人なのかは分かるよね? 話してくれたじゃない」
パメラは頷いた。
『カガハナ』第二作目の攻略対象者、ロナン・ハロフ・デリメス。彼は一言で他者との接触を嫌う対人恐怖症だ。
デリメス子爵家は爵位は子爵だが、アルトヴィアの商業の大物。その財力と力を狙う者は多かった。そのため、幼い頃からロナンに接近する人が多かった。特に友人だと接近してくる者のほとんどがロナンではなく、デリメス子爵家に接近するための偽りの友情だった。
その中でも特にひどかったのは女性たちだった。彼に近づいた少女たち皆がロナンの美しい容姿やデリメス子爵家の金と力に魅了されただけで、ロナンのことが人間として好きだった者はいなかった。むしろ純真だったロナンを内心嫌悪し蔑視したり、勝手に利用しようとした人もいた。
それでも何も知らなかったら夢に落ちて生きていくこともできただろうが、よりによってロナンは情報収集に非常に有用な適性を持っていた。そのため、ロナンは自分に近づく人々が皆偽りの友情と愛で点綴されていることを知ってしまった。
父親のデリメス子爵に苦情を打ち明けたが、子爵はただ高い家の令嬢を確保して家の勢力を育てるように促すだけだった。母親はデリメス子爵の金を利用して数多くの男性と浮気をしたり、遊興を楽しむだけだった。子爵は政略結婚で勢力を助けた時点で妻の役割など終わったと放置した。
そのような世界の中でロナンはますます人を信じられなくなり、特に女性を遠ざけるようになった。さっきパメラの手を拒否したのもそのためだった。
それでも最低限の交流を消化しているのは、彼が商業の大物であるデリメス子爵家の長子だからだけだった。商業をするには人と交流できなければならないから。そのため、ロナンは他者と事務の関係だけを結んできた。しかし内心心を交わす関係を望んでいたし、今の自分を変えるために『仮面の社交祭』に参加した。それが攻略対象者ロナンの〝設定〟だった。
『仮面の社交祭』に潜入した主人公セイラと出会い、真の愛を知り否定的な過去を克服するのがロナンルートの内容だった。つまり、彼が過去を克服するためにはセイラの攻略が必要だった。
ところでセイラとの関係が完全に消えてしまったら?
「設定集や後日談で短く言及された程度だけど、攻略されなかったロナン様は結局性格を直せないよ。『仮面の社交祭』でも他に良い縁を見つけることができなかったし、卒業後に父親のように政略結婚をすることになるだけだったね。政略結婚自体は貴族には一般的なことだけど……結局、ロナン様が過去を克服したという内容はなかった」
「可哀想だね。でも貴方はそんなロナン様も嫌がってたじゃない? ロナン様には婚約者もいないのに」
「相手を調べるという理由でギリギリ不法に近い情報収集や迷惑もあったから。それに対人恐怖と女性嫌悪が無駄にひどくて攻略するのもすごく大変だったもん」
「婚約者がいるのに浮気をした他の攻略対象者よりはマシだね。そして嫌いな部分があっても心配する貴方はやっぱり優しいわ」
「からかわないで」
セイラは依然として落ち込んでいるように見えた。パメラはそんな彼女を見つめ、突然口を開いた。
「じゃあ、貴方が手伝ってあげたらどう?」
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