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騎士の怒り

 マーヴィンの攻撃は猛烈だった。しかし、アレクはうまく阻止していた。


 力も速度も技術もいずれもマーヴィンが優位だった。しかも彼の適性はアレクと同じ『氷』。アレクは半魔族なので魔力量と出力ともに年齢にしては相当なレベルだが、生きてきた歳月と積み重ねてきた修練の格差を越えるほどではなかった。


 それでもアレクが要領よく防いでいるのはセイラとベインのおかげだった。


 ――氷結魔法〈極地の撤退〉


 アレクとマーヴィンは同時に巨大な氷の撤退を放った。マーヴィンの方が大きくて硬かった。だがベインの砲撃がマーヴィンの撤退を削り、二つの撤退は衝突して壊れた。アレクは氷が砕けて舞い散る中に迷いなく飛び込んだ。鋭い氷片が彼の全身を傷つけたが、セイラの回復魔法があっという間に回復させてくれた。


「はあ!」


 アレクはマーヴィンの肩を狙った。その一撃が受け流されて隙間が生じた。マーヴィンはすぐに反撃した。しかし、アレクは何の保護具もない左腕で剣を防いだ。刃が届く瞬間、腕の外側に光の膜がかぶせられた。その膜がマーヴィンの刃を弾き出した。


 マーヴィンはセイラの方をちらりと見て舌打ちをした。


「聖女の力は本当に面倒だな」


 マーヴィンがアレクより強かったとしても、彼を無視してセイラを攻撃する余裕はなかった。しかも、たとえ攻撃するとしても、セイラの神聖魔法は単なる防御程度ならマーヴィンの攻撃さえも十分に防ぐレベルだ。マーヴィンもそれを知っているのでイライラしていた。


 一方、アレクはベインとセイラを信じて果敢に動いた。後方からの直接的な牽制とアレクの猪突猛進が調和すると、マーヴィンとギリギリ拮抗する形勢が維持されていた。もちろんアレクの方もマーヴィンを相手に優勢を占めることはできなかったが、パメラの方がカーライルたちを整理するだけでもそのまま勝負がつく。


 だがそれとは別に、アレクは気分が悪かった。


 ――氷結魔法〈冬のイバラのやぶ〉


 アレクが作り出した氷槍の弾幕がマーヴィンに降り注いだ。マーヴィンは同じ魔法で応酬した。氷槍の数も威力もマーヴィンの方が上だった。しかし、それはアレクもよく知っている事実。そのため、彼は魔法を撃つやいなやすぐ疾走した。ぶつかり合う氷の破片をかき分けて進んだ彼は魔力がたっぷり込められた斬撃を放った。


「はああああ!」


 二回、三回、四回。自分が怪我をすることも気にしない攻勢一辺倒だった。むしろアレクの攻撃を防ぎ、避けて反撃し、傷を累積させていたマーヴィンが眉をひそめながら後退した。


「かなり皇女を大切にしているようだな。俺が皇女を侮辱したのがそんなに不快だったのか?」


「貴様の反逆は口でやるものか?」


 アレクは挑発で応酬したが、燃える眼差しだけを見ても答えは明らかだった。その姿がさらにマーヴィンを不快にさせた。


「……気持ち悪いな。俺もあの御方をそのように守ってあげたかった。だがあの時の俺には力がなかった。ところであの御方を殺した奴らの娘をそんなに必死に守ろうとするとは、とても不愉快だ」


「呆れたな!」


 叫び声を気合にして、アレクはまた剣を振り回した。氷の魔力が渦巻く一撃だった。防御するマーヴィンの剣を凍らせる勢いだった。もちろんマーヴィンは同じ魔力で応酬した。


「貴様が守れなかったことをパメラに転嫁するのか? パメラに何の罪があるのかよ? ティステ公女と陛下の間に何があっても、それはパメラが生まれる前のことだ!」


 マーヴィンは唇をかんだ。


 もちろん、それはマーヴィンも知っている。そして彼は仇敵の娘として生まれただけで罪だと思う人ではなかった。パメラに怒るのは無駄な腹いせにすぎないこともよく知っていた。しかし、だからといって利用できるものを利用しないほど甘い人でもなかった。


「それは俺も知っている。だが皇帝に復讐するのは簡単なことではない。そのため皇女を利用するということだ。大人しく従うならば荒々しい手段を使うつもりはない。この戦いも……」


「拉致をしたくせにそんな戯言をしゃべるのかよ」


 アレクは突然後退した。魔法を使う感じも、また突撃する気配もなかった。マーヴィンは彼を魔法で制圧しようとしたが、ベインとセイラの牽制のため不可能だった。


「認める。俺の力は貴様に及ばない」


 アレクは突然そう言った。


「でもそれは俺が見習い騎士アレクとして戦った時の話だぞ」


 彼の目が赤く染まった。


 変わったのは目の色だけではなかった。魔力の気配そのものが今までとは違っていた。マーヴィンと同じだった冷たい魔力から、まるで彼の怒りを代弁するかのように熱い魔力で。アレクが握った剣から炎が上がった。


 マーヴィンは目を丸くした。


「適性が変わったと……!? 貴様、まさか半魔族……」


「はあ!」


 ――火炎魔法〈地獄の波〉


 アレクは剣を振り回した。荒波のような炎がマーヴィンを襲った。彼は氷の壁を建てたが、壁はあっという間に溶けた。一息に駆けつけてきたアレクは燃える剣を振り回した。


「無駄だ!」


 マーヴィンはさらに強烈な冷気で立ち向かった。熱気と冷気が正面からぶつかり相殺された。威力自体は依然としてマーヴィンの方が優位だったが、同じ魔力の対決だったさっきまでとは違った。正反対の魔力が相殺され、マーヴィンの防御は弱くなった。ベインの砲撃が隙間をさらに広げるかのように炸裂した。


「くっ……!」


 慌てて魔法の防御を回復するマーヴィンに向かって、アレクは燃える剣と眼差しを向けた。


「貴様の境遇に同情はしている。あの時見習いだった貴様は王家の権力に対抗してティステ公女を守ることができなかったのだろう。だが騎士として正しくない手段に手を出した時点で、貴様を殴り倒す理由は十分だ」


「……なら俺が何をすればいいのか?」


 マーヴィンの眼差しにも怒りが漂っていた。


「あの御方を失った憎しみは消えない。俺が騎士として守らなければいけない者はあの御方の仇敵だ。俺に力があるのに、仇敵を懲らしめずにじっとしていれと言うのか?」


「何が正しいかなんて俺の知ったことじゃない」


「なら貴様は何のために戦うんだ?」


 アレクは鼻で笑った。何も知らないマーヴィンをあざ笑うように。


「一応この戦いが終われば貴様もわかるはずだ。だから今は大人しくぶん殴られてよ」

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