10月の泥濘
ここ最近のことだが、妙に気だるい。別段体が痛いわけでも心に病を抱えているわけでもなしに。毎日の授業のせいだろうか。友達はそれなりにいる方ではあるが休日遊ぶような友人はほとんど居ない。小中学校では今よりもっと友と呼べるような人は少なかった、ほとんどの休み時間は机に身を伏せ一人で妄想を広げていた。懐かしいな。
???「ねぇ、こんな蒸し暑い日によく寝れるね。暑くないの?」
自分「寝ることぐらいしかやることないし…えっと、君名前なんだっけ?」
由美「由美だよ、鴨井由美。同じクラスメイトだよ?それにもう半年は経つのに。そんなんだから皆に相手にされずに今日みたいに昼休みも寝て過ごすことになるんだよ?」
由美はいつも一言余計であった、それだけでなく確信をつくようなことを口に出すからさらに傷ついた。
由美「それよりさっきの先生おかしかったね笑。急に笑いだしたと思ったら急に涙流して泣き出すし。しまいには心配して声かけてた子に怒鳴りだしてたし笑。」
自分「そうだっけ?ずっと静かだったけど」
由美「そんな訳ないよ、皆もびっくりして教室中大騒ぎだったんだよ?あっ、君寝てたから覚えてないんでしょ?」
そんなはずはない、いくら休み時間中ずっと寝ている僕でも授業くらいは真面目に顔をあげている。たまに眠くはなるが、さっきの時間は国語で僕の一番好きな授業だ、担任の山本先生がいつも小説を読み上げてくれる。常に温厚で、いつも騒がしい生徒達も山本先生の前では黒板に体を向け、いつも手にしている携帯電話もゲーム機も机の中にしまっている。
今日もそういう何気ない一日だったのに、この由美って子はなんてふざけたことを言っているのだろうか。
自分「そんな嘘は僕には通じないよ、そもそも君と僕は席が隣じゃないか。さっきの時間だって先生の小説を一緒に聴いて、一緒に朗読してたじゃないか。」
由美「……。」
この子はいつもそうだ、確信をついたことを言われるとすぐに口を閉じて話さなくなる。そんなんだから周りに友達も出来ず、昼休みもこうして僕に話しかけに来るのだろう。
自分「そもそも高校生にもなってそんな嘘が通じると思った?僕を子供扱いしすぎだよ、確かに僕はお風呂も寝るときも一人じゃ怖いし、一人じゃお洒落なカフェにも行けない。それでも人に嘘は絶対につかない。君と僕は似てるところはあるけどそこだけは明確に違うね。それに山本先生は生徒に怒鳴りつけるような人じゃない、あの人は生徒からも同じ先生達からも慕われてる。どんな嘘をついても、山本先生の嘘は許さないよ。」
それから先はどんな話をしていただろうか、何年も前の話で記憶が乏しい。しかしまだ妙に気だるい、この気だるさはなんだろうか。




