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叫んだのはサスケ氏じゃない。
ぼくだ。
では何故ぼくは叫んだのか。
サスケ氏に何かされた訳ではない。
彼はオタ友とはいえ男性なので、軽々しくぼくに触ったりなんかはしない。
むしろサスケ氏も何があったか分からない、と言いたげな表情でぼくを見ていた。
なら何故ぼくは叫んだのか。
答えはぼくのスマホが語っていた。
「で、でーた……とんでる……」
ファンクロのデータが、無い。
まっさら。なにもない。
あれほど時間と、お金と、愛を注ぎ込んだファンクロのデータが。
データ、ぼくの、ぼくの、ぼくの。
「し……き……………ぶ………」
ぐるん、と世界が回る。
ふわふわ。ふわふわ。ぐるぐる。
「な、成世氏ーーーーっ!?!?」
友人の叫び声を聞いたのを最後に、ぼくは意識を失った……。
第一話 おわり。