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「だ、誰!?」
知らない声。でも幼い声だった。
式部がぼくとサスケ氏を守るように前に立つ。
「あっはは!そんな警戒しないでよ!こっちこっち!」
声のした方を向くと、そこには小学生くらいの男の子がいた。
……って、ええ!?この子まで巻き込まれてんの!?運営やばくない!?
「ちょ、ちょっと!きみ大丈夫!?んー、えっと、今助けてあげるから……!」
「先輩、お待ち下さい。先程彼はくえすとと仰っていました。彼もぷれいやー、なのでは?」
「だいせいかーい!ボクもプレイヤーだよっ♪」
男の子はニコニコと笑ってぼくらに近づいてきた。
式部は警戒を緩めない。敵意は無さそう……だけど。
「これは緊急クエストって言ってね。運営にとってやばーいプレイヤーが現れた時に突然行われるクエストだよ」
「緊急……クエスト?」
「運営からしたらさっさと潰して欲しいプレイヤーみたいだから、なりふり構わず発令しちゃうんだ。そのプレイヤーに逃げられないようにわざわざ空間まで切り取ってさ」
じゃあさっき感じた何かが「ずれた」感覚ってのは……
「ま、まさかこの空間だけ、切り取られちゃったの!?」
「そう!その通りだよ〜♪すごーい凶悪犯がプレイヤーだったりとかー、一般人を巻き込まない為にこんな感じに空間切り取るんだけど」
「おもっくそ巻き込まれてんじゃん!!」
「あはは♪そうみたいだねー。まあこの運営って割と適当っていうか、馬鹿だからさあ」
男の子は笑顔を崩さず言う。
まるでこの状況を楽しんでいるみたいだ。
……待って。
こんなおかしなことに巻き込まれてるのにヘラヘラ笑ってられるってことは、まさか……!!
「キミが凶悪犯……!?」
「あ、違うよ。ボクもただ巻き込まれただけだよ」
違ったらしい。
まあこんな小学生が凶悪犯なんて、それは流石に無いか……。
「先輩」
「ん?なあに?」
ぼくだけに聞こえるよう、式部が耳打ちしてきた。
「一応、警戒しておいた方が良いかと」
「……あの子のこと?」
「はい。何が起こっても、おかしくありませんから」
「うん、分かった」




