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「成世氏!」
「はうあっ!」
サスケ氏に声をかけられ、ようやく現実世界へと戻って来られた。
危ない危ない。式部との妄想はまるで麻薬だ。程々にしておかないと戻って来られなくなっちゃう。
「式部氏との世界へ行っておられたのでござるか?」
「うー、サスケ氏にはバレバレだったようだな…」
「別世界へトリップなさるのは結構なことだが、拙者は成世氏と式部氏のカプ推し故……口に出して語って貰えた方が嬉しいのでござる」
「さ、サスケ氏ぃ!!」
多分、サスケ氏は神かそれに近しい何かなんだと思う。
「さて、成世氏!部員を募集するでござるよ!」
「あっ……うわあ……思い出したくなかったのに……」
ぼくらには抱えている問題があった。
まあ、ぶっちゃけ部員が少な過ぎることなんだが。
一応文芸部と名乗っているが部員は2名であり、実質同好会に過ぎない。
たった二人の部員の為に教室をひとつ使わせるのは勿体無いと。
このままだと廃部の危機だと。
部として続けていくには最低5人の部員が必要であると。
……まあ、そういうことを昨日先生に聞かされたのだ。
「うう。ぼく、サスケ氏と語れる場がなくなるのは辛い…」
「拙者とて廃部は免れたいでござる。成世氏、ツテは無いのでござるか?」
「あるように見えるのか?」
「…………」
サスケ氏、そこは否定してくれよ。
いやでもぼくには本当に友達が居ない。
自慢にもならないけど。いや、自慢したくもないし。
そもそも、こんな見るからにオタサーって感じの部活に誰が好き好んで入部するだろうか?
うう、自分で言ってて悲しくなってきたぞ。
なんか隣の教室を使ってる怪しげな部活……なんでも部……いや、よろず部、だっけ?にも、縋りたい気分になってきた……。
あそこ、生徒会長が入部してるから割とやりたい放題なんだよね。
でもでも、得体が知れないし……うう。
「よし」
「成世氏!何か思いついたのでござるか!?」
「とりあえず……」
「とりあえず……?」
「ファンクロしようか!!」
……ぼくは現実逃避に走った。