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「な、なな、成世氏!?」
「ふえっ!?ど、どうしたんだ、サスケ氏!?」
サスケ氏はぼくの肩を掴み、興奮したかのように語ってきた。
「か、香氏は、その、完全にリアル式部氏では!?それこそ、本当に嫁が画面から出てきた状態でござるか!?そして、まさかこれは、リアルしきなるでは!?拙者が、拙者が求めていたものが、今まさに目の前に!?我が人生に一片の悔いなし……!!」
読みやすいように区切ったが(所謂メタ発言である)、実際はこの間僅か10秒も無かったのである。
オタク特有の好きなジャンルは早口になるアレだ。
そしてその間ぼくは興奮したサスケ氏にずっと揺さぶられていたので……
「う、きもちわるい……」
「な、成世氏ーーーーっ!!」
当然、こうなる訳である。
「……お離し下さい」
式部の淡々とした、だけど明らかに不機嫌さが混じった声が響く。
「先輩が、苦しそうなので」
「はっ!な、成世氏!すまなかったでござる!拙者興奮して思わず……!」
「う。だ、大丈夫……」
「先輩、」
式部がぼくに触れる。
その瞬間、気持ち悪さがすっと消えた。
「……っ!ちょ、スキル使ったの……!?」
「……いけませんか?」
「もう……!気持ち悪くない?大丈夫?」
「この程度、問題ありません」
「ならいいけどさ……」
……あ。
目の前にサスケ氏がいるのにスキルとか何とか言っちゃったぞ。
だがそのサスケ氏は目をキラキラと輝かせてこちらを見ていた。
み、見られたって困るんだが……!?
「リアルしきなる……!」
「さ、サスケ氏?」
「嗚呼これこそ拙者が求めていた解釈一致でござる……!!」
「おーい、サスケ氏ー?」
「拙者、しきなるの為なら幾らでも当て馬モブを演じられるでござるよ……!!」
「聞こえてるー?」
「寧ろ拙者如きがしきなるの当て馬になれるなんて、喜ばし過ぎる……!はあ、推しカプ尊いでござる……」
……うん。聞こえてないな。
まあ何か喜んでるみたいだし良かったってことにしておこう。
ぼくはサスケ氏に何度も声をかけたが、彼は解釈一致だと幸せそうに妄想を続けているのであった……。
第六話 おわり。