6-3
「あのさあ、式部。……じゃなかった、香。ずっと気になってることがあるんだけど」
あの後、ぼくたちは学校に戻って来て。
時間は過ぎて、今は放課後である。
「何でしょう、成世様」
「それ!」
「……?どれ、でしょう?」
「その成世様っての!止めよう!?」
「でも成世様、」
「ここ学校だよ!?というか学校じゃなくてもダメ!絶対浮くもん!」
「…………」
式部は少し考えた後、言った。
「それは、命令ですか?」
「命令!」
ぼくは間髪入れずに答える。
「命令であれば、貴方に従いましょう。しかし、そうなると私は成世様をどう呼べば…?この時代で自分の上に立つ者は何と呼ぶのでしょう?」
「うーん……先輩、とか?」
「先輩、ですか?」
「うん」
正直同じクラスに居て先輩もおかしい気もするが、他に良い言葉が思いつかなかった。
苗字呼びなんかさせたら拗ねそうだし、式部。
あ、でもクラスではもう成世様って呼んじゃってるんだっけ。急に呼び方変えて変に勘繰られないかな。
そもそもぼくクラスで空気だし、誰も気にしないか…。
「よし、これから先輩って呼ぶこと!」
「承知致しました、先輩。……ですが、」
「……ん?なあに?」
「……もう、お名前で呼ぶことは、許して貰えませんか」
「……う、」
……何だろう。前からずっと覚えていた違和感。
式部って、こんなにプレイヤーに執着するようなキャラクターだっけ。
ううん。むしろ逆で。
命令には忠実だけど、プレイヤー個人には全く興味を示さないようなキャラクターだった。
親愛度が上がろうがそのスタンスは変わらなくて。
どうでもいいんだよね。プレイヤーのことも、自分のことも。
まあ、そういうドライなところが好きで、結婚したいとも本気で思ってたんだけど。
だから、こんなに自分に執着しているのは、何か────
「成世氏!」
「!?!?さ、サスケ氏!?」
いつの間にか目の前に立っていたサスケ氏に呼びかけられ、ぼくは思考を停止した。
「聞いたでござるよ!転校生の話!」
「あ、うん。来たよ、転校生」
「ん?もしやそちらにいるのが転校生では?」
「はい。藤原香と申します。どうぞ宜しくお願い致します」
「ああこれはご丁寧にどうも。拙者は……」
その瞬間。サスケ氏が、フリーズした。




