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「ふむ。結局遅刻して反省文を書かされ……それで成世氏は部活に遅れたのだと」
「はう。すまぬなサスケ氏」
ところ変わって小さな部室に部員が2人。
ぼくは文芸部(という名のオタサー)に所属しているのだ。
もう一人の部員はサスケ氏。
本名は……何だっけ。忘れちゃった。
サスケ氏は数少ないぼくの友達。
口調はちょっと変だけど、バリバリのオタク。
勿論、ファンクロもやってる。
「良いのでござる。成世氏とファンクロ談議することこそが拙者の生きがい故」
「うう、サスケ氏…!ぼくにはもう、サスケ氏しかいないよぅ…!」
「ははは。成世氏の相棒はただ一人、式部氏だけでござるよ」
「はっ!そ、そうだった!ごめんよ式部!浮気じゃないんだ!ぼくは式部だけ!式部のお嫁さんだから!!」
……式部。
それはぼくのファンクロの中の推しだった。
いや、もうファンクロの中だけの話じゃなかった。
ぼくは式部にガチ恋をしていて、大好きで大好きで愛してて結婚したくて。
式部はURキャラ……いわゆる最高レアのキャラなんだけど。
正直、彼はURの中では外れだと言われていた。
非常に扱いづらいキャラなのだ。
それに加えてプレイヤーに対して一切デレない。
大体のキャラは育てていくとデレを見せてくれたりするのだが、式部は自分のことを人形だと思っているキャラであり、それ故に他人と距離を縮めたがらない……言ってしまえばデレてくれないキャラだった。
だから式部を扱うファンクロプレイヤーは非常に少ない。
……でも。
でも!!
『初めまして。私は式部……あなたに使われる為だけの存在です』
初めて式部を引いた時、ぼくは運命かと思ったんだ。
一目惚れだった。
それほどまでに、式部はぼくの好みの男性だったんだ。
だからぼくは式部を育てた。
例え彼がデレてくれなくても関係無かった。
そんなことでぼくの式部への愛は変わりはしなかった。
家が裕福だったせいもあり、式部の新衣装が出る度に課金して課金して……気づけばぼくは上位ランカーになっていた。
上位ランカーで式部を使っているのはぼくだけだったから、偉く有名になった。
自分が「式部の人」みたいな扱いをされているのは、気分が良かった。
そう、まるでぼくと式部が公式カプだと認められているような優越感。
ああもう。式部のこと考えたら、また頭がふわふわして……。