5-1
「ほんっとうに大丈夫?なんならスマホに入ってて貰っても良いんだよ?」
「いえ、少しでも経験値を稼げた方が良いでしょうし、私は残ります」
普段なら出かける時は式部を連れて行くのだが、今日はサスケ氏と遊びに行く日である。
かと言って家に一人で残しておくのも不安なんだけども…。
「押し入れ、狭くない?」
「平気です。私は押し入れの神になります」
うーん……。
式部の性格的にふざけている訳でも無さそうだけど、一日押し入れに放置は可哀想な気もする。
やっぱり貰える経験値を犠牲にしてでもスマホに入れてあげた方が良いと思うんだけどな……。
「ところで成世様」
「何かな」
「サスケ様とはどういった御関係で……?」
……おや。
これはひょっとして嫉妬している……?
やばい。尊いぞ。
「サスケ氏はヲタ友だよ」
「をたとも…?」
「本当に仲良しな友達なんだ。だから今日遊ぶのむっちゃ楽しみにしてた。男女の関係とか、そんなのは一切無いよ」
「……う、失礼致しました」
物凄く申し訳なさそうな表情をする式部に、ぼくは思わず笑った。
「謝らなくても良いのに。それよりほんとに留守番任せて大丈夫?ずっと押し入れの中だよ?お手洗いとか……」
「問題ありません。……成世様、このままでは約束の時間に遅れてしまいます」
「あっ!いけない!それじゃあ行ってくるね!」
「はい。行ってらっしゃいませ」
まだ多少の不安はあったが、式部なら大丈夫だろう。
それよりも遅刻とか有り得ないし!走って行こう……!!
「サ、サスケ氏ー!」
「成世氏!」
待ち合わせ場所に既にサスケ氏はいた。
ぼくの姿を見て手を振ってくれる……が、
「あぁ…絶対待たせたよね……!うう、クズでごめん…やむ、」
「問題無し。拙者が少し早かっただけで、成世氏は時間ピッタリでござるよ!」
「うう、サスケ氏優しい……すこだ……」
「成世氏、浮気は御法度でござる」
「ち、違うぞ!ぼくには式部だけだもん……!」
いつものやり取りを交わし、目的地へ向かう。
そう、今日ぼくらは戦場に向かうのだ……!
「人生初スターヴァコーヒー!ヲタで陰キャのぼくらには敷居が高すぎる……が!」
「うむ!今日こそ拙者らは戦場に足を踏み入れ、ちょっとお洒落な陽キャの仲間入りでござる……!!」
そんな大層な……と言われるかもしれないが、ぼくらにとっては夢の第一歩なのだ。
気合いも入れたし早速……!
「な、成世氏!」
「ど、どうしたんだサスケ氏……!?」
「拙者、緊張のあまり財布に現金が入っていなかったでござる……!!」
「なん、だと……!?」
戦場を前にぼくらはUターンし、まずは銀行でお金を下ろしに行くことになるのであった。




