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「……何をなさるのですか、」
「し、きぶ……」
ぼくは咄嗟に式部に抱き着いた。
「もうやめて……!その人もう戦えないよ……!」
「しかし、」
「だめ……!やめて!」
お願い。分かって。
祈りを込めて、抱きしめる力を強める。
「……成世様、」
「なあに……?」
「それは、御命令ですか」
「……お願い、です」
「お願い……ですか」
少し考えるような素振りをした後、式部は男の首から手を離してくれた。
男は咳き込んだ後、慌てて逃げ去って行く。
「どうして止めさせたのですか」
「……ぼく、式部が人を傷つけるの、見たくない……。絶対、見たくないの……」
安心して、力が抜けて、ぼくは泣き崩れてしまった。
「……泣かせてしまった」
「……え?」
「私が、成世様に涙を流させてしまった」
「え、ちょ、……式部?」
「これはもう、腹を切ってお詫びするしか……!」
「ちょ、ちょちょちょちょ!待ってーーーーー!!」
だから何でそうなるの!?
今にも切腹しそうな式部をぼくは何とか説得するのであった。




