3-2
正直、まだ夢じゃないかと疑っていたので、思い切り自分の頬を抓ってみた。
「いった!」
「成世様…!?」
「あ、ううん。大丈夫」
どうやら夢じゃないみたい。
どういう原理かは知らないけど、とにかくこの式部は本物みたい。
ぼくは推しに会えたので事態を前向きに受け止めることにした。
「成世様、先程からこの機械が音を出しておりますが……」
「あ、スマホのこと?MINEが来てるんだよ」
「らいん?」
「手紙のやり取りみたいなもんだよ」
MINEとはアレだ。誰もが知ってる緑色のあのアプリのことだ。
「成程……」
式部は興味深そうにスマホを眺めている。
そっか、現代の物に鈍いって設定だったもんね。
でも友達のいないぼくにMINEなんて来る訳……
「あっ!!」
「?」
そうだ、サスケ氏だ!
一週間も学校を休んだ上に、現実世界に式部が現れちゃったもんだからすっかり忘れてしまっていたが、サスケ氏はぼくのことを心配してくれている筈だ!
仮にも唯一の友達なのにMINE未読無視とかクズ過ぎるだろぼく。やむ。
案の定、MINEにはサスケ氏からのメッセージがめちゃくちゃ来ていた。
これは文章だけで済ませるのもどうかなと思ったので、電話をしてみることにする。
「もしもしサスケ氏!」
「な、成世氏!大丈夫でござるか!拙者もう心配で心配で一日10時間しか眠れなかったでござるよ!」
「結構がっつり寝てんじゃねーか!!……ごめん、サスケ氏。心配かけちゃった、よね」
「いやいや、成世氏が元気になってくれただけで拙者は一安心でござる」
「サスケ氏……」
クズのぼくに対して聖人すぎる。
やっぱりサスケ氏は神かそれに近しい何かなんじゃないだろうか。
「しかし成世氏……本当にもう大丈夫なのでござるか?その……」
「ああ、ファンクロのこと?あのね、そのことなんだけどさ。サスケ氏に聞いて欲しい話があって」
「ふむ?はてさて何の話で……!?」
「な、何をする!?やめ、……………!!!!」
用事を告げる前に、通話が切れた。
いや、問題はそこじゃない!
絶対!今のサスケ氏の様子は普通じゃなかった!
というか、どう考えても何者かに襲われたような……!!
「ど、どうしよう!?どうしたらいいかな!?」
「落ち着きましょう、成世様。まずは事態を整理するのです」
式部は落ち着き過ぎな気もする!
いや、式部には通話内容が聞こえていなかったから当然か。
よし、とりあえず落ち着いて……!
〜♪
「ふぎゃあっ!!」
突然通話音が鳴り響き、僕は飛び跳ねた。
ディスプレイに表示されていた名前は……サスケ氏だ!