感情 嘆き
その少年は嘆かずにはいられなかった。
なぜなら、少年の家庭環境は、身の回りはひどいものだったからだ。
母は物心ついてすぐに蒸発。
父は暴力をふるってばかり。
兄はよろしくない者達とつるんでいる。
姉は病院から一歩も出られない。
少年は、家族というものを知らずに育つしかなかった。
年を一つとるごとに嘆いて。
まわりの人間と比べるごとに嘆いて。
家に帰るたびに、家から出るたびに嘆いていた。
やがて、大きくなった少年は嘆く事をやめた。
相変わらず母はいなくて、父は暴力的で、兄は素行がよろしくなく姉とは面会できない。
嘆いても、問題は何も解決しないと理解したからだ。
少年は家を出る事にした。
ここに居続けていては、嘆く事しかできないと理解したからだ。