6日目
バーナーは野外病院のベッドで新聞を読んでいた。 アラン公国は降伏したが1部の地域で戦闘が止んでないとの事が書かれていた。 そんな中、第4軍の指揮官、カール・フリードリッヒ・ヴェルナー・フォン・ブルクハウス上級大将がやってきた。 バーナーは慌てて立ち上がろうした姿を見たブルクハウス上級大将は制止させ、座ったままであるが敬礼していた。
「少し話がしたい」
そう言って、護衛や副官を下げさせたが彼らは反発していたが最終的に折れて出て行ったと同時に話しかけた。
「貴官に帝国軍の最高名誉賞である、マクシミリアン・フリードリヒ勲章を受勲するつもりだ、皇帝陛下の命でね」
その事を聞かされたバーナーは驚愕した、マクシミリアン・フリードリッヒ勲章は過去に受勲された者は数十名であり大半は階級の高い人や大きな手柄を取った者のみが受け取る事が許される勲章だ。しかも生前に受勲した例は極稀である。 そんな名誉ある勲章を受勲すると言う、しかも貴族出身ならまだ分かるが農民出身の例は無い。
多少パニックになっているとブルクハウス上級大将が笑っていた。
「前例が無いから戸惑っているようだが前例を作ってしまうのが良い、これからは貴族出身に囚われずにいつか君のように平民出身の将校も出てくるだろう」
「しかし私は大隊を指揮していたに過ぎません、流石に勲章を受け取る程の事でしょうか?」
「そうだな、確かに君は指揮をしていた、だが君たちは包囲されながらも生き延びる事が出来た、戦死者や従軍不能になった兵士にも手厚い保証をすると皇帝陛下のお達しもある」
多少の思惑に気が付いた、アラン公国の戦線にて第4軍が戦線を下げて敗北した事を伏せたい、その為に大隊を指揮しながら大隊クラスを立て続けに防ぎきったという"英雄的"な指揮官を欲しているのだろう、しかし皇帝陛下の命を逆らう事も出来ない…。
難しい顔をしているとブルクハウス上級大将が苦々しい顔になっていた。
「思惑や政治的理由で受勲するのは嫌だろうな…新聞を読んでいたな、裏を見て欲しい」
読んでいた新聞の裏を見てみると"包囲されし大隊生還!"と書かれていた、詳しく読んでみると市民には既に知れ渡っているようだ。
「私の失策で多くの犠牲者が出た、すまなかった…」
ブルクハウス上級大将が頭を下げた。
「頭を上げてください、戦況を確認せずに前進してしまった我々にも非があります!」
流石に焦った、副官とかに見られたらぶん殴られていただろう。
「・・・分かった、怪我が治り次第もう一度来よう、本当に嫌であるなら私から皇帝陛下に言おう」
そう言うとブルクハウス上級大将は外に出って行った。
ブルクハウス家は伯爵である事は分かっている辱める事は流石に出来ないと思ったバーナーは決心した。