アイギスシステム
旧でもいたアイギスさんの再登場です。
ちなみに作者のTwitterでイメージイラストが載っています。ご興味あればよろしくお願いします。
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門番が衛利を通してから地下へと案内したのを確認すると、サイナギは電撃ネット弾が装填されたランチャー持ちを先頭において自らは後ろに控えて事務室へと急ぐ。地下に続く階段を下り。待ち伏せの為の部屋にたどり着いて、電磁ネットのランチャー持ちに扉の方に構えさせる。
声を殺して獲物を待つ。待ち伏せする男達は少し嫌な汗をかきながらもノックの時を待ち。鉄の扉が二度ノックされた。
「開けろ」
サイナギが言い放った瞬間、扉に小さな穴が開く。サイナギ達は何もしていない。だがランチャー持ちが首から血を噴き出して倒れた瞬間にサイナギは理解した。
「伏せろ!先手を取られたぞ!」
サイナギの声に部下たちも理解していようがいまいが身を隠すように姿勢を低くする。
「聞こえるか!おい!」
無線機をつけて監視室にいる部下へと呼びかけるが反応はない。その間にも何かがぶつかり破裂した音が複数聞こえると扉の穴の数と同じぐらいの部下が倒れ伏していた。
「いけねいけねいけね!」
とっさの判断で煙幕グレネードを床に投げつける。更に逃げる部下が扉を開けたので、閃光グレネードを放り投げると炸裂を待った。煙幕と共に廊下に転がった閃光グレネードがまぶたを超えた光と、地下に響く爆裂音を鳴らした。
今だと階段を駆け上がり逃げ出したサイナギが走った先で、控えていた戦闘カスタムを施した汎用フレーム「ソルジャー」が地下に向かっているのとすれ違った。
「流石にあいつを一人で相手するのは無理だろうなクソッタレ。ケドウの奴に頭を下げたくなかったが」
ケドウから調達したソルジャーの整備や維持する技術を持った人間はいない。ケドウ自身も彼を支援しているオフィサーと呼ばれる人物から貸し与えられているのに過ぎないのだが。
「大丈夫ですか」
上に居た部下たちが駆けつける。そのまま下に行こうとするがサイナギは慌てて怒鳴りつけた。
「行くな!このまま港に行って外に出るぞ!車を用意しろ!」
彼らがここを去りながら下では激しい衝突音が鳴り響いていた。
「ドローン援護のない人一人っ子だと思っていたが」
恐らく相手も鼻から話し合う気はなかったのだろうか。騙し打ちしてから、じっくりいたぶりながら色々なことを聞き出そうとしたに違いない。そう思うと心の底から寒気がして怒りと共に悪態が沸き立つ。
「卑怯者がよ……」
―――
【予想外要因:ソルジャータイプが接近中】
血を流して横たわる案内人の隣で衛利は特殊拳銃「コイルガン」を扉へと構えていた。すぐさま高い脅威の人間を「始末」し、後ろに控えていた重要人物を捕縛しようにも、それを阻止する要因があった。
そんな彼女はファイバーアーマーの全身に青い光を漲らせ、瞳も少し青みがかっていた。扉から逃げ出す人間を後ろから撃ちながら衛利は問うた。
「どうするアイギス?」
そう虚空に問いかけると、衛利の聴覚神経に直接機械音声らしき声が響く。誰からも聞こえない啓示のようにも思える無機質な声が命じる。
【排除を】
衛利と33とは違う「意思」が衛利の視界とファイバーアーマーが備えるレーダー機能から割り出された敵への評価が算出した。その間にも扉から煙幕が漏れ出した。
「ソルジャータイプ……どうしてこんなものが?」
【不明】
「ラングレーを呼んで」
【緊急通知を送信】
疑問を口にするがすぐ切り捨てられる。そして次は対処法を提示する。閃光と爆裂音が襲ってくるが、神経の調整で全くそれを衛利は受け付けない。
【20㎜機関銃を搭載。マガジン箇所を予測照準】
「分かった。それが『正解』なのね」
ソルジャーが廊下へと到着し衛利を認識した瞬間手に持っていた機関銃を掃射しようとするが、先制してコイルガンでマガジン接続部を貫通され、モノの数発撃ちだして弾切れを起こす。
そこは戦闘用すぐさま腰に装備された特殊合金製の近接ブレードを持ち出して切りかかる。ファイバーアーマーのイオンスラスターを起動し素早く横へと回避運動を取ると関節部へとコインガンを照準を合わせる。
【小規模電磁バリア発生を確認。コイルガンが無効。破壊は困難。ラングレーに対処。ユリア・ネストに脱出人物の足止めを要請】
あらゆる判断を下した「アイギス」はラングレーに救援指示を出す。そして衛利のチャンネルを操作して無線を開いた。
「ユリアさん聞こえますか?」
『もしもし? 騒がしいようだが』
「事務所から脱出しようとしている人間を足止めしてください」
『どうしてだ?』
「アイギスがそう判断したからです」
『アイギス? ……分かった。それらしきトラックがあったからな』
衛利が地面に伏せるとブレードが衛利の居た場所の空を切る。どうしてもあのソルジャーは衛利を足止めするつもりでいるらしい。
「しつこい……」
衛利の声は抑揚なく、目は一切の感情を込めず、呼吸も整然として、思考は感情に関係なく目の前の障害へと注がれていた。