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ブラックスワン  作者: 鴨ノ橋湖濁
アーコロジー
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幕間


 提案i:中米における薬物汚染供給源への爆撃強化


 北米都市のアーコロジー建設が50%遅れており、イヌモ非認可の薬物の流通が後を絶たず中毒者への医療コストを圧迫している。


 違法薬物の移送が疑われる車両への無警告爆撃、薬物生産に携わる農場一帯への枯葉剤散布、薬物流通を取り仕切る組織所有物件へのソルジャータイプの投下と鎮圧を行いました。


 最初の一か月によって組織は壊滅状態に陥りましたが、残党は地下に潜伏。巧妙に捜索ドローンへの偽装を施した地下農場建設等で立て直しを図っており、バンカーバスターによる地下施設への攻撃が必要であると提案いたします。


 回答:提案を認可。米軍の連携協定に基づきバンカーバスターの供給を依頼する。



 提案i:アフリカ少数民族紛争への支援継続及び増加する難民キャンプ対応


 アーコロジー以外での人間生存圏を縮小するための汚染作戦に関連し、現地政府に敵対的な少数民族への武器弾薬の空中投下を行い、紛争地帯の拡大を図りました。


 想定通りアフリカほぼ全土において部族単位での紛争が開始され、アフリカの資源地帯への警備依頼も前年比300%の需要増加を見込んでおります。


 一方で発生した大量の難民について、反政府組織へと提供している大型UAVを用いた機銃掃射や絨毯爆撃を不定期に行いアーコロジー収容予定人数への縮小プログラムを実施します。


 回答:提案を認可。支援ドローン等を増産。及び報道者へのミスリードや欺瞞工作を開始。



 提案i:アーコロジーでの人間指導者抹殺作戦


 人間指導者、および候補となる人物を抹殺し、その後周囲の人間にはその人物が生きていると工作することによって、順調に政府活動が稼働しているように見せかけます。


 既に九州アーコロジーにおいて工作が開始され、指導者及び候補の抹殺を開始しています。空位状態を隠しつつ円滑な運営を可能に出来るように九州アーコロジーにおける権限の拡大を認証。及びリストアップした人物への権限付与を提案。


 回答:提案を一部却下。現状の権限で十分運営は可能である。更に一部の人間に運営権限を与えようとするのは、新たな指導者を誕生させる原因となる。


 ―――


 ケドウはアーコロジーの最上階近くの廊下でメビウスと並んでいた。


「よかっだろう?」


「何がでしょう?」


「彼女たちを生かしていて」


 意地悪そうな質問にメビウスは動じずに答えた。


「こうなることを見越してあなたは彼女たちに今まで手加減を?」


「いいや全然。たまたまな成り行きだよ。それでも奴の目を私たちから逸らすことは出来たろう」


 笑うケドウに首を横に振るメビウス。


「呆れました。もっと計算済みで進めて頂きたい」


「どうせ既に計算されたことだろう。私以外の存在が」


「あなたの友達が?」


「そうさ。どのような状況であろうと私をてっぺんまでたどり着かせる。それに一応保険も向かわせたからね。まぁ、あと少しだ」


 そう言ってポケットから取り出したガラスで出来たカプセルを、ケドウは愛おしそうに撫でる。


「やめなさいケドウ。一歩間違えればあなたにも危険ですから」


「なぁに。どうせ普通の免疫なら軽症で済む。これは上層に住む彼らにしか死に至らない。皮肉なもんだね。自然界のあらゆる病をだいたい治療薬なしで完治させる免疫を持つ人々の、数十キロ先では自然な結核が流行して死に至る者達が居る」


 廊下のガラスが昼から夜に切り替わり、郊外の街並みが燃え上がる景色が広がる。


「ここではすべてがペテンだ。情報はもちろん人の生死でさえも、故に誰かが死んでも死んだ誰かを学習した機械から返信があれば、生者は騙され本当だと思い込み、それを探ることはしない」


 すぐに昼過ぎの都市に戻る。郊外は燃えてはいないがところどころ煙が立ち上っている。ケドウはそれを見て目を細める。


「始まっているか、当然だろう。あそこに眠る全ての武器庫の場所をリークしたんだから」


「満願成就ですか?」


「半分だ。ソドムは出来上がった。後はゴモラだ」


 にっこりした笑いを浮かべてカプセルを上着のポケットにしまうケドウは、廊下の最奥にあるエレベーターへとたどり着いた。


「さて、引きずり降ろそうじゃないか。偽りの王を」


手抜き工事ゆるして……ゆるしてクレメンティア

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