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ブラックスワン  作者: 鴨ノ橋湖濁
集中攻勢
30/91

暴発の裏で

ちょっとリアルが忙しいですが何とか投稿

 ホームレス達の集まるテント群の前にバンが停まり。続々とフルフェイスのヘルメットを被り、サブマシンガンやショットガンを持った人間が続々と降りてくる。

 表情は見えないがホームレス達にすぐさま引き金が引けるように銃口を向けて威圧していく。その中で唯一防弾チョッキを着ているリーダー格の男が、一人の女性の服をひっつかむと質問する。


「ここに俺たちの仲間を殺した奴が潜んでるんだって聞いてな。お嬢さん知らないかい」

「い、いえ。知りません」

「だろうと思ったぜ。……たくよ」


 思いのほかあっさり女性を離したリーダーは手に持った拳銃をちらつかせながらテント群の奥へと歩いていく。部下たちも周りを固めてついていくと、先ほど衛利たちと話していた男がやってくる。


「おーあんたか。ちょうどいいや。ここに、二人の子供が逃げ込まなかったかね?」

「見なかったが」


 男はきっぱり言い切ると、リーダーは男の肩に手を置いて顔を耳元に近づけた。誰にも聞かれない小声で話しかけた。


「一応目撃情報があるんだが、俺たちもそこまで暴こうっておもっちゃいねえよ。ただ不意を突かれて殺されちまうのが嫌なだけでな」

「……」

「ぶっちゃけどうなんだよ。居るのか? 居ないのか?」


 剣の会の大半は加入しない人を快くは思ってはいないが、リーダーは別だと男はこれまでの交流で理解していた。男はなるべく小声で言った。


「もういない。どこかへ去っていった」

「方向は?」

「知らない。気が付けば消えていたからな……おい」

「どした?」


 男がリーダーから目を離して部下達に目を移す。部下の一人が端末を持っていた見ずぼらしい格好をした中年男性を詰問していた。端末を取り上げようとする部下に、中年男性は必死に首を横に振って応じない。


「何やってんだか」


 リーダーが見かねて部下の元に行こうとした。その時だった。


「じゃあ死にやがれ。この役立たずがよ」


 詰問していた部下が突然大声で悪態をついて中年男性を足蹴にして地面に転がしたところに、その顔面へサブマシンガンを撃ち込んだ。


 空気が凍った。


 中年男性は顔から血が吹き出ながら動かなくなった。その銃撃を見たり聞いたりした人々は悲鳴をあげたり背を向けて離れようとする。


「おいおい!お前何やってんだよ」


 リーダーが慌てて発砲した部下に駆け寄ると、部下は激高したままでリーダーに詰め寄った。


「平気でいられるわけないだろ!昨日やさっきも仲間が死んだんですよ!? 俺たちは見えない誰かに命を狙われてるんだ。こいつらのような協力もしない連中の中に殺人鬼が潜んでるかもしれないってのに!」


 リーダーは諭そうとする。


「お前。実力行使は控えろって若頭が決めたことじゃねえかよ」

「若頭がなんですか!あの人たちはこうやって現場に来ないで自分の好きなように口で言うだけだ。実際現場に行って死ぬのは俺たちなのに!なぁみんな!」


 呼びかけに他の部下たちも賛同し始める。


「そうだリーダー。なんで二日間、俺たちだけが攻撃を受けてるんだ。せっかくこっちがわざわざ外来種共と同盟を組んだのに」

「奴らが私たちをハメているんじゃなかって。みんなが噂してますよ」

「自分達と協力しない奴らを尊重してむざむざ死ぬのはごめんだぜ。殺人鬼庇ってるんなら、こんなところ奴ら焼き払ってあぶりだせばいいんだ!」


 いきり立つ部下達が手あたり次第に銃器をホームレス達に向け始め発砲し始める。


「止めさせろ!」


 男がリーダーの肩をひっつかむが、リーダーの反応は薄い。


「ちっ。もういい」


 必死の勢いで男は目の前の獲物へ夢中になっている部下に飛び掛からんとするが、数発の発砲音がして男はうつ伏せに倒れ伏した。

 小さな銃口から煙が昇る。震えた手で拳銃を持ち続けるリーダーは背中を撃った男の亡骸を見てから腰に下げた無線機を手に取った。


「こちら臨時捜索部隊1班。どうぞ」

『こちら総本部。どうぞ』

「高架下のホームレステントが殺人鬼を匿っており、その上捜査に抵抗したため止む無く発砲しました。殺人鬼捜索を進めますが危険と判断した人物への発砲許可を求めます。どうぞ」

『……こちら総本部。発砲を許可。殺人鬼の姿は確認できたか?』

「いや。だが、尋問した奴からしたら、さっき出て行ったばかりであまり遠くには行ってないらしい」

『了解。周囲を封鎖する。決して逃がすな。以上』


 通信を終えるとリーダーの手は震えながら通信機をしまう。それから部下の凶行や火が上がり始めたテントを見て。念仏のように小さく言葉を繰り返した。


「俺は悪くねぇ……俺は悪くねぇぞ!」


 ―――


 ユリアが銃声の発生元を検索すると哨戒していたドローンからのカメラ情報が視覚に表示される。


「見つかったわけじゃないようだが、クソ」


 悪態をつきながらも光学迷彩を起動したマントを被り移動し続ける。小路に次ぐ小路の連続、アイギスが策定したルートに沿って足早に歩いていく。

 ドローンからの配置情報や傍受した無線から、剣の会はテント周辺に包囲網を形成しているようだった。それでも光学迷彩によって人の目をだまして通過すると大きな路地の手前までやってくる。

 そこは最後の警戒線。その路地を抜ければその先に監視はなく。ラングレーに乗り込んで中央区へと容疑者の少年を引き渡す。


『とりあえず私はこの子を教会に預けようと思う』


 ユリアがファイバーアーマーを介して衛利に通信して視線を落とせば、両手で持ち上げている少女は意識が回復してはいるがじっと目をつむっている。


『分かりました。警戒線を抜けたら別れましょう』

『ああ、だけどこれだとケドウを追うどころじゃないな』


 衛利もマントの中で容疑者と共に歩いていく。


「君。名前は?」

「シゲオです」


 衛利と歳が2,3しか離れていないシゲオはどぎまぎしながらマントの中で体を密着させながら歩いていく。ファイバーアーマーの質感は硬く冷たい。


「右手のパルスガンは外れない?」

「どうやっても外れないんです」

「そう。でも、もし何かおかしなことしたら……」

「そ、そりゃあもちろん分かってますよ」


 イヌモのプライベートフォース相手に何をしても勝てない事はシゲオにも分かる。命は惜しかったし、何よりイヌモに身柄を渡されると言う圧倒的存在の保護に安心すら抱いていた。


「パルスガンはどこで手に入れたの?」

「僕の働いている廃墟農園の出入り口で突然絡みついてきたんです」

「分かった……。君の働いている場所は後で詳しく話して」


 昨日にソルジャーと緑色の光を放つ髑髏、メビウスに襲われた時に、あえてソルジャーで事件でおびき寄せておいて、その間に何かしらの陰謀を働いていたことになる。

 哨戒させたドローンもソルジャーの捜索に集中させていれば、どこからか侵入する穴をつかれる可能性もある。考えたくはないが相手はドローンの配置を完璧に把握することになるが……。


「ねぇ。あなたプライベートフォースの人なんですよね」

「ええ。そうだけど」

「僕はどこに連れていかれるんです?」

「イヌモ圏内の司法で裁かれる」

「死刑とかは、ないんです?」

「ない」


 シゲオは意外そうな顔をしてほっと息をついたが、また不安そうに聞いた。


「リナは犯罪に問われますか?」

「あの子が何か罪を犯したの?」

「いいえ!違うんです。ただ……すみません。リナもあの塔に入れてもらえませんか?」


 衛利への提案にすぐさまアイギスが衛利の脳内で回答する。


【プライベートフォースの権限では、抑留や逮捕以外での制限区域内への侵入許可は不可能です】


「それはダメ。でもあの子を剣の会が追ってないのならネスト教会で預かれるから、あそこなら安心出来る」

「でも、僕があっちに行ってしまったら」

「面会が出来る制度もある。限定的だけど、二度と会えなくなることはないから」

「そうですか」


 最後の警戒線の路地が見えてくる。アイギスは衛利に警告を送る。


【哨戒ドローンが警戒線にて車両を発見】


 その警告をユリアも受け取り足を止める。光学迷彩を使っている以上、目視どころか耐火性もあるマントには熱探知すらも欺ける。自警団や民兵ならこの程度の欺瞞で十分だとアイギス判断し、衛利は再び足を進める。

 だが、その時再び衛利たちに警告が入る。


【警告。量子探知を検出。戦闘機型ドローンが接近、シルエット識別:ハイイーグル】


 ユリアは驚愕してから苦虫を噛み潰したように歯切しりする。


「量子探知だって!? まさかあの倉庫で山分けした……」


 ニッシュがケドウに持ち掛けた取引の中の品の一つ。結局ボーダレス商会と剣の会が山分けした物に1機ずつの「ハイイーグル」と呼ばれる大型ドローンがあった。

 三角錐を倒したようなシルエット、両脇に伸びる翼のようなフレームに静音プロペラが内蔵され、鳥の足のように垂れ下がっている二丁のサブマシンガンが良く見えた。

 更に恐ろしいのはこの機体だけに内蔵された最新の量子レーダーによって、原子まで透過された【目】には光学迷彩マントの欺瞞は白昼に晒されたように意味を成さない。

 4人を完全に捉えたようでハイイーグルは上でホバリングし警戒音を鳴らしている。車両は衛利たちの通る路地の前で停車している。ユリアは聞いた。


『攻撃も出来るわけもないしな』

『……』


 撃墜すれば三者の合意による繋ぎ止めは崩壊する。観念するしかない。衛利は無言でそう伝える。車から降りてきた若い男が数人を引き連れて衛利たちの前へとやってきて口を開いた。


「既に君たちは見つかっている。そんな布切れで隠れずに話し合いをさせてほしい」

「話し合い……」


 教育制度が崩壊した近年、自警団どころか住民全体には道徳どころか話し合うことすら放棄した人間も増えている。

 そんな今更高尚な提案をすること自体が罠のように感じたが、アイギスが重要人物として登録している人物と一致したことに衛利は賭ける事にした。

 先頭に立った若い男が歩み寄って来る。


「初めまして。プライベートフォースさん。私の名前は東条義越とうじょうぎえつと申します。先日は、父の雅言がこの前はお世話になりました」


 にこやかにする背の高い貴公子相手に、衛利もマントを外してシゲオに手渡すとまっすぐ義越と相対した。


「っ……」


 一瞬衛利の顔を見た義越がたじろいた事に衛利は頭の中で首を傾げた。

本当は凍京ネクロやドルフロイベントするだけなんですがね。

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