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ブラックスワン  作者: 鴨ノ橋湖濁
集中攻勢
25/91

20mmの弾幕

 襲撃の現場の通りはちょうど邦人達が住む地区と未掌握地域の境目にあるような場所で、比較的傷が少ない住宅と植物が絡みつく廃墟の間にある通りだった。

 邦人の男は仲間の変わり果てた姿を目の当たりにして「ひどいな」と呟く。

 倒れた5人の男たちはほぼ一か所で全員が上下半身に分かれていた。遺体には一方向に赤い水と塊が散らばっている。しぶきからして未掌握地域方向からの狙撃によるものだとすぐにわかる飛び散り方をしていた。

 みんなが顔をしかめる中で、涼しい顔をしているアイギスに身を包んだ衛利が周囲を見てアイギスを分析を待っていた。


【遺体の損傷と弾痕から敵は20㎜口径の銃を使用したと推論】

「敵は一斉射で5人の人間を狙撃したってこと?」

【有力な推論は、ソルジャータイプによる20㎜強化機関ライフルによる精密射撃が有力】


 外壁に出来た弾痕を見れば、コンクリートの表面を易々と打ち砕いて出来た穴を覗いてみる。


【警告:狙撃確認】

「なっ……?」

【緊急制御開始】


 アイギスの緊急制御によって一時的に衛利の身体を掌握する。すぐさま腰を弾いてまるでエビが泳ぐように一蹴りでその場から離脱する。


(発射音がない)


 先ほどまで衛利の頭があった空間を影が通り抜け、コンクリートから打ち付けられたような音がしてぱらぱらと崩れる。

 無理な運動によって少し衛利が痛みで顔を歪ませながら、狙撃位置と予測された方向に陰になるように住居に隠れるが。関係ないと今度は住居ごと葬らんと斉射によって破壊の限りを尽くす。

 穴だらけの住居を一直線に、弾幕に追いつかれないように窓を突き破って住居を脱出。その時アイギスが待望の知らせを持ってくる。


【狙撃位置。解析完了】

「突撃する。身体負担は考慮しないで!」


 衛利が叫ぶとその体が未掌握地域へとすっ飛んでいく。


【戦闘コードAEGISを起動。全コアを稼働。電波最大出力。生体神経掌握。上空の公共データドローン群への経由、優先割り当て完了。『33』電脳サポート確立。イオンスラスター光でのレーダー妨害】


 全身からイオンスラスターの青い光を放出して猛進する衛利がコイルガンを引き抜いた。


【敵の約推定2km。使用した弾丸に電磁反応を確認。電磁加速銃身を使用を確定。検索結果。20㎜電磁加速機関砲】

「見えた」


 衛利の視神経がアイギスのレーダー情報を投影して、ある一点をズームする。廃墟と化したアパートの屋上付近にそれはしゃがみこんで陣取っていた。

 緑色に装甲が塗装されたソルジャータイプが、その巨体に合わせて2門が連結された機関砲を脇に抱えて衛利へと砲口を向けている。


【敵のロックオン妨害の有効を確認】

「敵の機関砲を狙って!」

【ロックオン】


 まだ1kmと敵と半分の距離からコインガンを一発放つ。風向きや重力を計算された狙いは音速の何倍の速度で接近。

 しかし、ソルジャーもすかさず銃身をずらしてボディ弾丸を受ける。人間が運用する手持ちサイズでは、例えレールガンでもバイタル周りの装甲は貫通出来ない。溝が出来て終わりだ。


「敵の狙撃を妨害しながら接近」


 1分も経たないうちに既に1km到達している。回避も兼ねているため遠回りしたりする。射線予測に入れば減速や加速をして回避しながら衛利もコインガンを放つ応酬が続く。


【敵機動作】


 見れば立ち上がったソルジャーは機関砲を衛利へと向けるとそれを掃射する。


【面制圧モードへと移行。ホログラムダミーを射出】


 建物の陰に隠れながら射線に小型のホログラム投影機を投げ入れれば、機関砲掃射が建物を暴力的な嵐に晒して砕くと、地面は水溜まりに雨水が打ち付けるように波紋と土ぼこりをあげていく。


「接近戦に持ち込んでブレードでないと分が悪い」

【身体への重大な負荷の懸念】

「クリニックまで持てばいい」


 ソルジャーが陣取る建物にしがみついた衛利はファイバーアーマー指先の繊維が変形して外壁に食い込み、足裏もスパイク状となって駆け上がる。


【グレネード炸裂調整】


 先に手りゅう弾を屋上に投げ込めば炸裂した閃光と煙が漏れ出し、偵察ドローンからの映像でソルジャーは目が潰れて煙から離れるように動いているようだった。


「勝てる」


 ブレードを引き抜いて迫る衛利が屋上へと到達し煙幕の中に突入して、未だにこちらを捕捉できないソルジャーに振り下ろそうとする。


「困りましたね。これ以上の損耗は避けなければならないのに」


 突然ブレードを受け止められると空間が歪んで、緑の透明マントから骸骨のような顔が飛び出すが。衛利が驚いてマントの隙間から見えるモノに驚いた。


「ファイバーアーマー……?」

「ええ。その通り」


 メビウス。彼は自身の杖でブレードを受け止めると押し出して衛利と距離を取る。


「こんにちは利府里衛利。私の名はメビウス」


 足元を見ればそれが人間のような二足歩行ではあるが、逆関節と蹄が存在している。


「……汎用フレームではないようね。新型の汎用フレームなの?」

【解析不能】

「っ!?」


 驚いた衛利の顔に確信を得たようにメビウスは言う。


「悪いですが、最低限の目的はこちらは達成していますから。あとはあなたが倒れれば良い……」


 メビウスは機械とは思えない人間染みた声色で告げる。


「利府里司徒の妹である。あなたがね!」

「司徒の……」


 衛利のアイギスとほぼ同様の配置された箇所から緑色の光を放つとマントが揺れる。

メビウスのイメージイラストです。興味があればどうぞ

https://twitter.com/nobumi_gndmoo/status/1258824410259025920

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