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ブラックスワン  作者: 鴨ノ橋湖濁
国を持たぬ者達
20/91

プランB

 メビウスは遠方から倉庫を伺い、計略の失敗を悟る。静かな倉庫には初撃のロケット弾以外の火柱や閃光は見て取れない。


「予定通りにはならなかったようです」


 彼の隣の空間が歪んだかのように動き出すと、透明化を解除したマントを脱ぎ捨てたケドウが現れる。


「あの流れなら確実に交戦状態に陥るはずだったんだが。やるなぁ」

「あのニッシュと言う女ですか?」

「双方さ。やはりこれほどうまくいくとあまりに露骨過ぎたかもしれないな」


 二人の上を偵察ドローンが倉庫を中心に空をかけていく。


「わざわざ偵察ドローンまで用意して、パーティのお客さんにヒロインの活躍をお披露目をしたかったのかな。オフィサーは」

「アーコロジーではパーティの最中なのですかね。さすがに無抵抗の人間に引き金を引くのは見栄えが悪い」


 ピロピロと一昔前の単調な電子音がケドウのポケットから発せられる。ガラケーを取り出した彼はすぐに耳に当てて応答する。


「はい。ケドウです」


 電話先の相手は近衛の横についていたメイドだった。


『オフィサーより連絡です。今後の方針について、計画を夜明けまでに提出せよとのことです』

「ええ。分かりましたよ。夜明けまでに」


 電話が切られるとケドウがすぐさまガラケーをいじってデータを送信する。


「オフィサーはなんと?」

「計画を提出しろってよ。夜明けまでにとか相当カンカンらしい。……プランはこれでいくか。はい終わり」


 ガラケーをしまったケドウが倉庫に背を向ける。


「帰ろうか。今日は疲れたからすぐ寝るよ」

「計画は?」

「今送ったよ。オフィサーが気に入ればいいんだが」


 あくびをしたケドウが視界の端にいるバンシーを見つけると、歩み寄って声をかける。


「言っただろ? 俺は死なないって」

「……すぐそう言って人に心配をかける」

「分かった分かった。すまなかったよ」


 口調を崩して笑うケドウにバンシーはそっぽを向いて先に帰路についてしまった。やれやれと肩をすくめたケドウはメビウスに振り返り少し考えて言葉をまとめる。


「さて。じゃあメビウス、いつものルートを使って剣の会の邦人共に、宿敵が手を組みそう的な噂を流しておいてくれ。ついでにサムライ共のバックについている奴らが動けばネストとボーダレスで戦力もトントンになるはずだ」

「オフィサーの承認を得なくても?」

「立案した作戦を修正することはあっても拒否したことがあったかい?」

「いえ。分かりました」

「はい。よろしく」


 軽いノリで頼み込みスキップをしながら上機嫌にケドウは帰っていく。その背中が遠ざかりメビウスはふんと鼻で笑う動作をする。機械の体に鼻はないのだが。


「まったく。テロリストらしくないですよ」

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