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ブラックスワン  作者: 鴨ノ橋湖濁
港湾編
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パラディウム

 ユリアは事務所に隣接する建物の屋上から監視していたところに衛利からの通信を受けていた。その衛利の言葉と共に、慌ててトラックに飛び乗る複数人を目視したユリアは急いで建物から降りようとする。その時、ユリアの視界が一瞬青くなっていく。


「なんだ?」

【こんにちは。本装備パラディウムに搭載されている戦術AIです。あなたの行動は本装備の実力を発揮する判断ではありません】


 すると青い視界に矢印が表示され、人間の形をしたホログラムが飛び降りていくのを、ユリアは本当の人が飛び降りたかと錯覚する。


「え、なんだ?」

【私があなたの考えている事を最速で成す順序を提示しています】

「んー突然現れて無茶苦茶言うなよ」


 人型が飛び降りて行くのを見ると、軽々と外壁のくぼみや取り付けられた物に着地しては下へと降りて消失する。


「やれって言うのか?」

【あくまで提示です。これならトラックに追いつきますよ。運動神経をサポートしますので、あなたは自分の体をさっきのトレースに合わせて動かすだけでいいのです】

「いや。いきなりこんなこと言われてもな。普通建物から落ちるようにするって命かかってんだぞ」

【ですがトラックに……】

「いいや。まず信頼できるかどうかが大事だろ。お前が間違えないなんて保証はどこにもないんだからな」

【では代案を策定します】


 いきなり出てきて、もしも変なことを提案されてはかなわないと思ったユリアはすかさず言葉を挟む。


「じゃあ注文していいか?」

【どうぞ】

「運動神経をサポートと言ったな。じゃあ射撃のサポートは出来るのか?」

【もちろん】


 すぐさまユリアは愛用である普通の拳銃を取り出すと、衛利が嫌だと言っても持たせてくれた、折り畳みが可能な延長バレルを展開する。そのままの状態でも機能するバレルだが更に延長され、さながら小さなライフルのような形態へと変貌する。


「トラックの車輪だ」

【了解。着弾予測算出】


 ユリアの視界にある照準は、拳銃の形状を把握したパラディウムが銃口がどこに向いているかでユリアの視神経へと伝達している。


【減衰、風向、重力……計算完了】


 更新された情報を投影され、着弾予測を得たユリアはすかさず引き金を引いた。瞬間。延長バレル内が紫電を発すると共に撃ちだされた拳銃弾。延長バレルの正体である電磁加速装備によって、単なる拳銃は簡易式の狙撃銃へと変貌していた。


 トラックの分厚いタイヤを突き破り。その上拳銃弾そのままの連射で次々と発射されていく弾丸が全てユリアの思う箇所へと着弾すると、タイヤを全損させるとトラックが沈む。


 それでもトラックは発進をしようとするが、すぐさま移動がままならなくなり。最後には急発進して壁に激突して動かなくなった。


【少しは信用していただけましたか?】

「ああ、だが降りるのは階段からだ」


 猛ダッシュで階段に飛び込むとユリアが問いかける。


「お前は33ではないのか?」

【33は機能に対話インターフェースが付いているだけです。私自身も本装備ファイバーアーマー:パラディウムの中にあるインターフェースです】

「じゃあ装備ごとに違う人格があるんだな?」

【ええ。アイギスにも搭載されていますよ】

「この鎧のどこにあるんだ?」

【うなじ部分です。そこからあなたの神経にも介入して、情報提供と認識拡張や神経制御を行います。もちろん記録も】

「……」

【どうしました?】


 パラディウムは突然黙った主人に疑問を持つが『記憶』の単語でユリアの脳内で検出した不快感が消え去るまで黙っておくことを判断した。

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