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第九八羽 時計の電池編

 制服に着替えたタンチョウはヤマセミに作戦が達成できた事を改めて報せた。



≪お疲れだな≫


≪ああ、事務員の服をありがとう。屋上の2番目のロッカーに入れておく。鍵は掛けないからすぐに回収してくれ≫


≪分かった。草野が教室に入って行くのを見た時はひやひやしたぜ≫


≪俺もだ。後ろから声をかけてられてびっくりしたよ。なんにせよ成功してよかった≫


≪ああ≫



 タンチョウはヤマセミとのやり取りを終えると頭の中には2つの気掛かりの事があるのを認めた。


 1つは今の仕事を終えた2年D組のその後である。時計の電池を盗むという依頼を終えたがそれだけでは授業の始まりを遅延させるには不足しているように思えてならなかったのだ。もしかしたら遅延以外の目的があったのかもしれないと考えて依頼の真意を確かめたかった。


 もう1つはロッカーの中にあった枕の事だった。恐らくライチョウがこなした仕事の物だろう。分かり切っていたがタンチョウは尋ねてみたかった。


 階段を下りていくと鐘が大きく鳴りだした事に気が付いた。


 4時限目が始まった。


 タンチョウはスマホを取り出すとグループ内にメッセージを送った。



≪依頼は達成した。ライチョウたちはどうだ?≫



 なかなか返事はなかった。タンチョウが返事が来るのを少しだけ諦めかけた頃にようやくライチョウからメッセージが来た。



≪まだ未達成よ。枕は確保したけれどそれを返さなくちゃいけないもの≫


≪そうか。屋上のロッカーに隠したのか?≫


≪どうして知ってるの?≫


≪変装するために着替えた制服を隠そうとロッカーを開けたら赤と黒のチェックの枕があったんだ≫


≪そうよ。赤と黒のチェックなんて眠れるのかしら?≫


≪さあな≫


≪タンチョウの枕カバーの色は何色なの?≫



 教えるような事でもないし、ありきたりな色だから面白みもない。と、思ってみても答えない訳にもいかなかった。



≪タンチョウは、小学生の頃からキャラクターの枕カバーだよねえ?≫


≪え、そうなの? キャラクターってどんな?≫


≪あれ? どうしたの?≫


≪カッコウはどうして分かるの?≫


≪まあ、見てれば分かるよ。これぐらい≫


≪あら、怖いわね≫


≪黙ってると本当にそうだと思われちゃうよー≫


≪図星だねえ≫


≪違うぞ≫


≪それは枕カバーの否定? それとも図星の否定? どっちも似たようなものだけど≫


≪恥ずかしがらなくてもいいと思うわ。私だって枕元にはまだぬいぐるみがあるもの≫



 ライチョウに後押しされるとタンチョウは少しだけ嬉しくなった。



≪そうだよ、キャラクターの枕カバーだ≫


≪やっぱりねえ。認めるなんて潔いなあ!≫


≪うんうん、可愛らしい時期もあったんだねー≫


≪オオルリは青と白のチェックだよね≫


≪違う、まったく違う≫


≪もー、タンチョウは男らしかったぞ≫


≪そもそもチェックをダサいと思うのが良くない≫


≪べつにそんな事は言ってないよ。枕カバーが何色なのかを尋ねて隠すのがダサいって事≫


≪じゃあ、キセキレイは何色なんだ?≫


≪わたしはずっと茶色だよー≫


≪あたしは雪の結晶模様だよん≫


≪私はモコモコの肌触りの良いカバー≫


≪どうして枕カバー暴露大会が行われているんだ。お前らのカバーなんて知りたくもないんだが≫


≪あー、ヤマセミがこんな事言ってるー≫


≪ヤマセミはアニメキャラのカバーでしょ≫


≪そうだ。好きなキャラクターだ。それも抱き枕だ。何か悪いか?≫


≪いや、なにも≫



 そうして4時限目は過ぎていった。


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