第九〇羽 時計の電池編
2時限目が始まった。
ライチョウは新しく作られたグループに報告を行った。
≪三島先生は職員室の南角の衝立の向こう側にあるソファで昼寝をすると考えられるの≫
≪ふーん、じゃあ後は枕の保管されている場所だねー≫
≪ええ、それが問題≫
≪困ったねえ。職員室に入ったの?≫
≪そうよ、神谷先生に進路について相談があると言って入室したの。三島先生に習った事はないけれどずいぶんと雑な先生なのね≫
≪ほー、どうして?≫
≪机の上やその周りを見れば分かるわ≫
≪そうなんだー。見てみたい気もする。まあ、仕事中にソファに横になって昼寝をする時点でいい加減な性格って事はあるていど察しが付くね≫
≪やっぱり枕は教員用ロッカーかなあ?≫
≪きっとそうよ。どうやって忍び込もうか≫
≪鍵がいるね≫
≪ピッキングは出来ないわ。そんな指先を器用に使う技術はないから≫
≪調査が必要だよね。枕の保管場所がどこなのか≫
≪でも、1日しかないよ。急がなくちゃ≫
≪教員用のロッカーにあるみたい≫
≪おー、コマドリちゃん!≫
≪ないすう!≫
≪知ってたの?≫
≪ううん、オオルリが調査してくれたの。ほら、三島先生って剣道部の顧問じゃない≫
≪そっか、オオルリって元剣道部だっけ≫
≪うん≫
≪こっちに協力してくれてるんだー≫
≪そうね、てっきり向こうにいるかと思った。まあ、向こうの調査の傍らにって感じかな≫
≪たぶん≫
≪いいねえ≫
≪でも、こっちは女子会だからね。入れられないなー≫
≪入って来ないでしょう、カッコウがいるんだから≫
≪失礼な男だよねえ。コマドリちゃん、なんとか言ってやって!≫
≪えー≫
≪ところでどうやって忍び込むの? 考えてる?≫
≪カッコウに協力してもらうつもりよ≫
≪え、あたし?≫
≪そう。もちろんオッケーよね?≫
≪まあ、平気だけど≫
≪決まりね≫
ライチョウは自信があった。ピッキングは出来ない。その代わりに出来る事はたくさんある。やりようはいくらでもあるのだ。
カッコウに手伝ってもらうと言ったが本当に助力が必要なのは彼女の計画によれば実行の時だけである。
実行には前準備が必要な事は分かっていた。それだけは彼女はひとりで行うつもりだった。
目途も立って余裕が出来たライチョウはタンチョウたちの事を考えた。
時計の電池を取る仕事は簡単ではないだろう。教室の中にあるとなればどこかに目があるはずだ。それを誤魔化すためには目を逸らすか、変装するかである。
ライチョウはそうしてタンチョウたちの事を考えていると本来の得意分野が逆転している事に気が付いた。
「私が向こうをやった方が良かったかもね」
思わず独り言ちると笑みまで零れだしてしまう。
上手く行くという自信がある。ならタンチョウはどうだろうかと考えて悩むさまを思い浮かべると楽しくなるのだった。
そんなタンチョウはライチョウの予想通りに悩んでいた。
頭を抱えている。決して授業内容が頭に入らないからではない。ヤマセミに相談してみても良い解決案は出なかった。




