第八八羽 時計の電池編
1時限目が始まった。
タンチョウは新たにグループを作るとオオルリとヤマセミを招待した。
ヤマセミはすぐに応じて入室したがオオルリがやって来ない。
≪2年D組へ行って来たが異様な雰囲気だった。人がいる気配がするのにしんとしてて喋っている様子さえないんだ≫
≪それについては予想できる≫
≪どういうことだ?≫
≪今日の4時限目に草野の授業が入っているからな≫
≪なるほど≫
≪俺たちも去年はずいぶん苦しんだだろ?≫
≪ああ≫
草野というのは化学の教員で容赦がなく、小テストがとても難しい事で評判だった。
タンチョウたちも去年はずいぶんと苦労したものである。
苦い記憶が蘇るが喉元過ぎれば熱さ忘れると言うようにどんな苦労をしたかと尋ねられれば「勉強した」程度の答えしか持ち合わせなかった。
≪それで察しがついた。時間稼ぎのための依頼だろう。やらなくてもいい気はするが、やるのか?≫
≪やるつもりだ。理由は推測に過ぎないが、願いはここにある≫
≪けっ、くだらねえ願いだぜ。もっとマシな依頼はねえのかよ≫
≪仕方がないさ。悩みは人それぞれだからな≫
≪ところでオオルリの野郎が入室してこないが?≫
≪そうだな。個人でメッセージを送って理由を聞いてみよう≫
タンチョウはオオルリにメッセージを送った。
≪オオルリ、入室して報告してくれ≫
≪すまない。それがコマドリに頼まれてライチョウが受けた枕について調べてる所なんだ。時計の電池に関しては調査していない≫
≪分かった。協力してやってくれ≫
オオルリの言う事に納得して見せたタンチョウは彼を責めなかった。
入室しない理由をヤマセミにすぐに教えた。
≪どうやらコマドリに頼まれてライチョウの枕について調べているらしい≫
≪はあ?≫
≪うん、こっちの時計の電池については調べてないって言っていた≫
≪あの野郎、ふざけやがって。コマドリに腑抜けにされやがったな。そこまで可愛くねえだろう、ぶっちゃけ。な?≫
≪いや、そんな事は無いぞ≫
≪おい、日和るなよ。男しかいねえんだぞ≫
≪俺はそこそこ可愛いと思うぞ≫
≪おいおい、マジかよ。お前がああいうのがタイプとは知らなかった≫
≪そうは言ってないだろう。タイプではない≫
≪タイプである事と可愛いと思う事はイコールで繋げられる。タイプだからこそ可愛いと思うんじゃないか≫
≪えー、暴論だ≫
≪いや、そんな事はない。じゃあ、お前はライチョウは好きか?≫
≪まあ、仲間として好きだよ≫
≪前置きは入れるな。好きなら好きでいいじゃないか。だったら早く仲直りしろよ≫
≪それが難しいんだ≫
≪俺はどれもこれも無理だな。碌なモンじゃない。もうちょっとこう、可愛げが欲しい≫
≪お前は昔から年下が好きだからな≫
≪うむ≫
≪話を戻そう≫
≪おう≫
≪ターゲットはもう決まってる。期限もな。ならどうやって俺が盗ったとバレずに時計の電池を奪うかだ≫
≪変装は必須だな≫
≪そうだろうな。変装はあまり得意じゃないんだが≫
≪考えろ。どんな物がいいのか≫
ヤマセミに言われるとタンチョウは方法を考え始めた。変装だけと結論を出してしまうにはまだ早い。
他の方法も考えてみているが良い案は思い浮かばずに時間だけが過ぎていき刻々と期限が迫ってくるのだった。
そして1時限目の終わりを告げる鐘が響いた。




