第七七羽 首輪をつけた三毛猫編
探し人は見つからないままですぐに時間はなくなってしまう。
午後の競技は体育祭の目玉競技が目白押しで会場中の人が注目をする。タンチョウはそのほとんどの競技に選手として選ばれていたので午後はますます時間が取れなくなる。
依頼の期限は午前中だったので午後からについては全く油断していた。ここまで時間がかかってしまう事など考えてもいなかった。
時間は流れていく。タンチョウは少しずつ焦っていた。キセキレイやカッコウに探し人を見つけるヒントでも貰えばよかったなどと後悔さえも抱くほどに。
タンチョウはジャージの線の色と顔しか覚えていない。それほど見分けのつかない顔でもないのに見つからないのが焦りに拍車をかけて行く。他にも思い出せないかと出来る限り記憶を遡るが一度ついたジャージと顔の印象が強すぎて他の記憶を暈してしまう。
1年生の綱引きが終わった。結果を見てなどいられなかった。
男子生徒の影も形も見つけられない。3年間も同じ学校にいたのなら顔とクラスを一致させるぐらいには覚えていてもおかしくはない。
そして2年生の綱とりが終わった。
タンチョウはこの間中、男子生徒を探し続けていたが見つからなかった。そんな結果を不甲斐なく思っているとインカムから声が届いた。
≪そこの肩を落としている君―≫
≪俺か?≫
≪そうだねー≫
≪なんだ?≫
≪振り向いて≫
タンチョウは言われるがままに振り向いた。
キセキレイとカッコウが笑っている。やはり彼女たちは何かを知っているのだ。
「なんだ?」
「探したんでしょ?」
「ああ、見つからなかった。何か知ってるのか?」
「まあね、たぶん男子の団員と接触してそのまま教室へ向かったんだよ。男子の更衣室は各教室だから」
「なるほどな。でも、教えてくれたってよかったじゃないか。俺は2人が来なかった時点でこっちじゃな
いなって予感したんだがな」
「裏と表を張るのは当然だよ。打てる手は打たないとね。タンチョウが表へ行ってくれたからあたしたちも裏張りが出来たの」
「まあ、被害さえ食い止められるならなんでもいい」
「そういう事―」
それでもニヤニヤと分かった風に笑っている2人が気に食わないタンチョウは面白くないと言うように腕組をしてあらぬ方を見た。
「あれ」
「怒ってる?」
「べつに、怒ってない」
「じゃあ、いいね」
「タンチョウにはまだ仕事をしてもらうからね」
「仕事だって?」
「「そうだよ!」」
2人は口をそろえて言った。タンチョウは悪い予感しかしなかった。
「どんな仕事だ?」
「後で教えるから」
「後っていつだ? 時間はそれほど無いぞ?」
「分かってる。今日中に終わらせなくちゃね!」
大きな歓声がグラウンドの方から聞こえて来た。綱とりが佳境を迎えているのだろう。
2年生の綱とりが終わり、いよいよ終盤の3年生の騎馬戦が行われる。
タンチョウが持ち場に行くとすでに武田が待っていた。
「遅いぞ」
「悪い」
「聞いたが体調が悪いらしいじゃないか、平気なのか?」
「問題ない。大丈夫だ」
「そうか。ふん、悪い物でも食べたのか?」
「そんな脆い腹じゃない」
「まあいい。平気なら戦え」
「分かってる」
「私は負けるのが嫌いだ」
「誰だってそうさ。負けるのが好きな奴はいない」
「だが、負けてもいいと思ってる奴らはいる。どこにでもな。勝つ気の無い者も同じ数いる」
タンチョウは黙っていた。
「敗北主義は最も嫌いだ」
「だから牽引する必要があるのか?」
「ふふふ、そうだ。分かってるじゃないか。勝つ気もない、やる気もない。そういった奴らを引っ張って
いかなければならない。人を率いて行くからこそ見える景色もある」
「どんな景色かね?」
「さあな、見てみるまで分からん。だが、きっといい景色だよ。私はそれを見たい。お前と、みんなで
な」
「そうしよう。もう一息だからな」
グラウンドの輪の外で待機している3年生の選手たちは各団に整列している。




