第七三羽 首輪をつけた三毛猫編
いつものメンバーで昼食を食べ始めると団席にいない事を変に勘ぐられた。
「彼女だろ?」
「違うよ」
「嘘をつけ。お前ほとんどいなかったじゃないか」
「腹の具合が悪かったんだ。もう大丈夫だ」
「本当かよ」
「ああ、ずっとトイレに籠ってうんこしてた」
タンチョウがおどけて言うと輪になっていた連中が笑った。
「飯時にそんな話するんじゃねー」
昼飯を食べ終えても時間はいくらか残っている。タンチョウはそのまま教室で過ごした。
仲間たちが横になって昼寝をし始めたのでタンチョウもそれに倣った。
ちょうど微睡み始めて気持ちが良くなってきているところに耳に付けていたインカムから声が流れて来た。
≪タンチョウ、ヤマセミ、オオルリ、今どこ?≫
≪教室だ≫
≪え、突然、なんだよ?≫
≪寝て…る……≫
≪こらこら、寝るな≫
≪第1校舎の西出入り口に来て≫
≪なんだ?≫
≪いいから≫
≪僕は無理だ≫
≪なんで?≫
≪ちょっと外せない用事があって。すまん!≫
≪こらー!≫
≪ちょっと静かにしててくれ≫
≪いや、マジで来て≫
≪どうして?≫
≪依頼主かもしれない人がいる≫
≪依頼人とは接触はするな。一線が引いてあると言ったのはお前のはずだぞ≫
≪そうだけど、今回のような犯罪まがいの事は許せないよ。覗きってなに?≫
≪俺は反対だ。行かないからな≫
≪じゃあ、ヤマセミは来なくていいよ≫
≪オオルリとタンチョウは?≫
≪俺は、寝る…≫
そして彼は本当に寝てしまった。
その間、何度かキセキレイが呼びかけていたがインカムは耳から抜け落ちていた。
鐘が鳴り、昼休みの終わりを告げられると体育祭が再開された。午後の部へと移っていく。
午後の初めは各団の演武から始まる。
タンチョウはこの競技を中々楽しみにしていた。
仲間の一人に揺り起こされて目を覚ましたタンチョウはゆっくりと伸びをした。
「おい、急げよ。演武に遅れると後で武田から大目玉を食うぞ」
「分かってるよ」
仲間たちは大急ぎで団席の方へと向かいだした。
タンチョウもそれに続こうと教室を出るとキセキレイが扉の前に立っていた。
「よお」
「おはよう、お寝坊さん」
「ははは、よく寝たよ」
キセキレイは表情をうんざりしたような苦い顔に変えてタンチョウを睨みつけた。
「なんだよ」
「なんだよ、じゃないよ。あーあ、これだから嫌だよね、男って」
「どういうことだ?」
「覗きをするのは男だって事。する側の男は警戒の意識が低いよねって言ってるの。どうして来なかったのさ?」
「寝てた」
「もう!」
「怒るなよ」
「知らない! 次に覗きの被害に会ったって子がいたらタンチョウの所為だからね。ライチョウが覗きに会っても平気なの?」
「平気ではない。止めなくちゃならん」
「むー。それもそれでムカつくな」
「どうしろって言うんだ」
「今度、呼びかけがあったら即応じる事!」
「分かったよ」
「よろしい」
「それを言いに来たのか?」
「そうだけど?」
「そうか、団席に行くか。演武を見なくちゃいけないからな」
タンチョウとキセキレイがそれぞれの団席に着くころには最初の演武を舞っている黄団を見る事が出来た。
前島・武田・美鶴が率いる団員たちはそれぞれの団色に身を包んで舞っている。
3人がそれぞれ綺麗だった。タンチョウは見惚れている。
名残惜しそうに最後の美鶴たちの舞を見届けたタンチョウは惜しみない拍手を送り続けた。




