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第七二羽 首輪をつけた三毛猫編

 タンチョウは幼い猫の小さな体が更に小さくなっていくのを見ると少しだけ怖くなった。


 耳のインカムに指を当てるとみんなに呼びかけた。



≪三毛猫が居た!≫


≪了解。どこだ?≫


≪第2校舎の角だ。校舎の渡り廊下方向へ走っていく。周りを囲ってくれ!≫


≪了解。ミソサザイ、どこにいる?≫


≪外にいるよ。でも、グラウンドの方にいるんだ≫


≪分かった。ヤマセミは?≫


≪第1校舎前にいた。向かってる所だ≫


≪オオルリは東側、ヤマセミは西側に張ってくれ≫


≪了解≫


≪分かった≫


≪ここで捕まえよう。でなきゃ失敗だ!≫


≪よし、準備は大丈夫だ≫


≪ヤマセミ、猫嫌いだなんて言ってられないからな!≫


≪分かってるよ、うるせーな!≫



 タンチョウは三毛猫を追っていた。三毛猫は校舎沿いを走るのを止めなかった。


 西側へ向かっている。ヤマセミのいる方向だ。


 第1校舎と第2校舎を繋ぐ渡り廊下を三毛猫が越えて行った。するとそのすぐ後にヤマセミが角から身を出した。


 意を決したかのようで少しだけ腰が引けているようにも見える。


 猫は瞬時に身をひるがえすとタンチョウと鉢合わせて少しだけ動きが止まった。ヤマセミの捕まえようと伸びる手を逃れてひょいひょいと渡り廊下の柱の方へと身をかわしてしまう。


 そして段を上手く利用して何度もそうした事があるかのような慣れた動作で渡り廊下の屋根に飛び移った。


 だが、タンチョウも負けていなかった。止まった動きの間に身構えると柱を支えている長方形のコンクリートに足をかけて勢いを付けるとそのまま屋根に手をかけてぐいと体を引き上げた。


 屋根の上に飛び乗った三毛猫を引き上げた勢いのまま飛びかかって次には両腕に猫を抱えているのだった。



 タンチョウは外れて落ちたインカムを拾い上げたヤマセミから受け取ると三毛猫を確保した事をみんなに報せた。



≪三毛猫を確保した≫


≪やったー。お疲れさまー≫


≪いぇーい。勝利だね!≫


≪勝利なのかは分からんが達成できた≫


≪すごい運動神経を見た。こいつは化け物だ≫


≪こらこら、ヤマセミ≫


≪運動バカの称号を与えよーう≫


≪いらない≫


≪ならーん!≫


≪良かった。ギリギリよ。ちょうど今、午前中の最後の競技が終わって昼休みに入ったところだから≫


≪そうか、良かった≫


≪だね≫


≪お疲れさま≫


≪とにかくこれで依頼は達成。応援団の者たちも安心して取り組めるな≫


≪そうね、心からお礼を言うわ≫


≪なんて事はない。少し膝を擦りむいたくらいだ≫


≪よーっし、じゃあ、後はわたしたちだね≫


≪うん、まっかせといて! あたしたちにかかればなんて事はないよ!≫


≪何のことだ?≫


≪いいからいいからー≫


≪プレハブ小屋に猫を持って行くんでしょう?≫


≪ああ、その後に昼休みに入る≫


≪ゆっくり休んでね≫



 タンチョウとヤマセミはそのまま再び第3校舎裏のプレハブ小屋に向かった。猫を入れるつもりなのだ。


 2匹の三毛猫がプレハブ小屋の中に入った。やはり2匹目の猫はいくらか身体が小さいように見えるのでタンチョウは親子である事を思った。


 扉を締め切るとタンチョウはようやく安心して仕事の達成を心から味わう事が出来るのだった。だが、どうにも気にかかる事がある。


 キセキレイとカッコウが後は任せてと言っていた事だ。なにか企んでいるに違いない。


 タンチョウはヤマセミと拳を合わせて仕事の終わりを喜ぶと彼女たちの企みを知らぬふりをして体育祭を楽しむ事にした。


 団席に戻ると人は疎らですでにそれぞれで昼食を取りに行っている様子だった。

 タンチョウも教室の中へと戻った。


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