第六七羽 首輪をつけた三毛猫編
第1校舎から少しだけ離れている。グラウンドに近い分、人の出入りもあるはずだ。トイレに行くにも第1校舎を使うはずだからだ。
≪第1校舎のどのあたりだ?≫
≪西出入り口の辺りだよ≫
≪分かった≫
反対方向だった。彼は今、東出入り口の方にいる。
「すぐ行こう」
「先に行って。その方がいい」
「分かった」
タンチョウはキセキレイを置いて走り出した。
西出入り口に来ると生徒が疎らにいた。トイレに行こうとしている生徒たちがちらほらといたので1人を掴まえるとタンチョウは尋ねた。
「猫を見なかったか?」
「猫?」
「そうだ」
「え、借り物競争なんてないだろ?」
「ああ、競技じゃない。苦情があってな。猫を探しているんだ。見ていないか?」
「見てないね。トイレからの帰りだけど入る時も見なかった。知らないのなら教えるけど第3校舎の方に猫のたまり場があるんだぜ?」
「知ってる」
周りをもう1度だけ探してみる。タンチョウは素手で猫を捕まえる自信はない。それなのに彼は何の装備もない状態で猫を探し続けた。
影すらも見えない。
「なあ、猫を見なかったか?」
「猫ならさっき見たけど」
「本当か? どこで?」
「さっき、向こうのあたりで見たよ」
「このあたりか。それは三毛猫だったか?」
「三毛猫だったかな? 分かんない」
「そうか、ありがとう」
女子生徒が示したのはタンチョウがやって来た方向とは逆を示している。納得するとそちらの方へと向かった。
校舎の角の所で座って地面に落書きをしている男子生徒がいた。
「なあ、猫を見なかったか?」
「ああ、見たよ。ついさっきそこでね」
男子生徒が示したのは西出入り口の傍だった。ミソサザイの証言とも合致する。
「三毛猫だったか?」
「ああ、三毛だったかな。首輪をしてたから飼い猫だろうね。多いよな、困るよ、俺は猫アレルギーなんだ」
タンチョウは礼を言って離れると西出入り口の前に立った。
扉は開放されていて猫でも難なく入れる。
扉の前に数組の靴が置かれている。中に人がいるのだろう。
扉の前でいくつかの人の足跡を見つけられたのでどこかに猫の足跡もないかと探したが見つけられなかった。
すると2人の女子生徒が校舎の中から扉の前までやって来た。ジャージの線の色から判断すると2年生であるらしい。
靴を履こうとしゃがんでいる。タンチョウは彼女たちが履き終えるまで待つと尋ねた。
「猫を見なかったか?」
「猫ですか?」
「三毛猫だ」
「見ましたよ。さっき、校舎に入る前に」
「どっちに行ったか分かるか?」
「いいえ。触ろうとしたけどそのまま校舎の中に入っちゃいました。ね?」
「うん。まあ、触るのも無理だったけどね」
「そうか、猫が苦手なのか?」
「違いますよ。逆に好きなくらいです」
「じゃあ、どうして?」
「だって私たちが入る時に男の人が触ってましたから」
「男が?」
「はい、3年生だと思うけど。線が緑だったから」
「他に特徴は覚えていないか?」
「えー、難しいですね。あんまり気に留めなかったから。ねえ、覚えてる?」
片方の女子生徒がもう一方の子に尋ねた。
「ううん、私も3年生って事しか分かんないかな」
「そうか、ありがとう。念のため確認するけれど三毛猫だったんよな?」
「それは間違いありません」
三毛猫がこのあたりを歩いているという証言は複数から取れた。
タンチョウは聞き込みを終えると辺りを一度、見回したがそれらしい姿は見えなかった。
≪ダメだ。いない。だが、新しい情報を得た≫
≪どんな?≫
≪誰かが三毛猫を触っていたらしい。3年生のジャージを着ていたと言ってる。目撃証言は2人の女子生徒から取った。2人とも三毛猫と3年生のジャージの男子生徒だと一致している≫
≪なるほどねー≫
≪依頼主かなあ?≫
≪だとするなら依頼する必要はない≫
≪うん≫
≪もう少し探してみよう。第1校舎の西出入り口のあたりに居たって事は分かっている。ミソサザイの証言は合っていたぞ≫
≪もうすぐリレーが終わる。戻った方がいいわ≫
≪了解≫
≪僕は引き続き捜索を続けるよ。出番は当分先だからね≫
≪頼んだぞ≫




