第六一羽 首輪をつけた三毛猫編
休日明けのある晴れた月曜日、少年は軽い足取りで家を出た。
背負っているリュックは軽そうでキリっと眉を吊り上げて前を見ながら歩を進めてゆく。
装いはジャージだった。年に数回あるジャージでの登校を許される貴重な日だ。
新鮮な気持ちで、そしていくらか好天にも負けないほどの晴れやかな面持ちで歩いていく。
楽しい事が待っているのだろう。
ある少女も興奮冷めやらぬ表情で、ずんずんとしっかりとした足取りで進んで行く。
好天を心から喜んでいた。まさに天が味方したと確信している。前途は明るかった。
神頼みなどしない性格だと自負していたがあやかれるのならばと昨晩にベランダに吊るしたテルテル坊主の事は誰にも言えない。
そしてやはり楽しくて嬉しい事が待っているのだろう。
また別の少年はそわそわと慌てた様子で家を出た。
待ち合わせに遅れてしまうのだ。誰かと、いやはっきりと言うならば恋人と待ち合わせているのだ。
今日ばかりは格好の悪いところは見せられない。体調は万全で、準備は万端だった。
昨晩、電話で話をしているといつもよりも早く彼女が切り上げようと言った。
何故と訝しむと恥ずかしそうに照れながら言ったのである。
「明日は弁当を作って行くから食べてね」と聞こえて来た時に彼はすぐに反応できなかったが「楽しみにしている」とだけ答えた。
それからは枕と布団を代わる代わる抱きしめた。初めての弁当。唯一無二だ。
近づくにつれて緊張が増していく。
ある少女は沈鬱な表情で家を出た。
今日という日ほど憂鬱になる日はない。彼女にとって苦痛の1日が始まろうとしているのだ。
どうにもできない。そのままどこかへ行ってしまいたい衝動をどうにか堪えている。
2,3歩進んではため息が口から出る。止めようともしていなかった。
自分の臆病さと無力さが憎らしい。欠片ほどの勇気とほんの少しの力があれば今すぐに「今日は1日を家で過ごす!」と家族に叩きつけて部屋に閉じこもってしまえるのに。
それなのに今の彼女には気だるげに学校へと向かうために足を運ぶ力しかなかった。その先で更に大きな力が必要になるのが分かっていながら。
そんな風に明るくて、少しだけ暗さもある、要ははっきりと白黒と付けられる大きな事が起ころうとしているのだ。
そして誰も邪魔をしようとする者はいない。少年と少女が手を取り合って、あるいは互いにぶつかり合う。
体育祭が始まろうとしている。




