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第五八羽 校門の植木鉢編

 タンチョウはオシドリの家を出るとそのまま学校へ戻った。彼が教室に戻ったのは5時限目が始まる直前だった。



≪オシドリから使えそうな道具を借りて来た。これを使えば大丈夫だろう≫


≪じゃあ、実行はいつやるんだ?≫


≪今日の放課後だ≫


≪急じゃないか? 慌てる必要はないぞ≫


≪いや、暗がりでやりたい。見つかりにくいからな。明日では道具は使えない。校内を運ぶのも人目に付くはずだ。今日やるしかない≫


≪分かった。上手く連携を取ろう≫


≪ああ、よろしく頼む≫


≪罠については心配ないと思う。ただ危険だと判断したならすぐに引け≫


≪分かってるよ。それよりも気にする事がある。そっちの方が難しい≫


≪何かあるのか?≫


≪些細な事だ。問題ない≫


≪いいんだな?≫


≪ああ、今日の放課後に実行しよう≫



 そしてタンチョウとヤマセミ、オオルリの鳥の巣の小鳥たちは互いにしか分からないメッセージを送り合うと放課後までに打ち合わせを済ませてしまった。



 放課後になった。刻一刻と過ぎていく時間を陽の傾きが教えてくれる。



 昼休みにターゲットを見失った岩畑は自分を恥じていた。尾行にはこれまでの経験も踏まえて自信があったのである。


 生徒会長の藤堂がランタンを紛失したという話を聞いて聞き込みなどの調査をすると怪しい人物を定めた。


 副会長の織川も「怪しい、怪しい」としきりに言っているのも判断の要因のひとつだ。


 放課後になって部活動へ行くターゲットを尾行した。彼が野球部の練習用ジャージに着替えている。


 怪しいと思えば何もかもが怪しい。なにせ尾行を撒いたのだから。


 岩畑はグラウンド内を駆ける彼を見続けた。もう2度と同じ過ちを繰り返しはしないと固く決意している。


 同じクラスの生徒がよもや尾行を撒くほどの実力を持っているとは思いもよらなかった。


 尾行を勘づいて、それでも平然と過ごし、あるポイントで完全に視線を切る。完全に上回られた。思惑も実力も、何もかもが彼の方が上手だったのだ。


 そんな事実を認めるとランタンの紛失もただの紛失事件ではなくなる。そしてこれまでの複数の紛失事件も関連があるに違いない。


 岩畑はこの学校の闇の中枢に入り込んでいくのを感じられないではいられなかった。

 練習が終わるまで岩畑は彼を目で追っていた。


 午後7時過ぎに練習を終えた。制服に着替えてターゲットが動き出す。リュックを背負ってバッグを肩にかけるとひとり玄関の方へと向かうのだった。


 動き出したのだ。岩畑はこれから何かが起こるに違いないと考えた。増援を呼ぼうか迷っている。


 副委員長の三宅がまだ図書室で活動しているはずだ。待機を命じているのだから。


 その間にもターゲットは進んで行く。夜になって灯りの少ない校舎が憎らしい。スマホなどの灯りが命取りになる。バレてしまえばそれまでだ。


 岩畑は増援を呼ばずに尾行を続ける事にした。


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