第五五羽 校門の植木鉢編
次の日、鳥の巣に依頼が投稿された。依頼内容を読み終えたタンチョウはオオルリとコマドリを誘っていいものか迷っていた。
誘うのはいいだろう。だが、参加して満足に仕事が出来るだろうか2人を疑っていた。
それでもクシャクシャの砂や松葉が付いたままの手紙を見ると1人でも多い方がいいような気持ちになっていく。
そしてタンチョウは全員に呼びかけた。いつも通りに≪集合だ≫と。
≪依頼が投稿された≫
≪あら、久しぶりね≫
≪ああ、少し期間が空いていたな≫
≪社会人は嫌な事があると仕事をして忘れるって言うよねえ?≫
≪さあ、分からないな。取り組みに集中して考えを逸らすって意味なら社会人でも学生でも同じだろう≫
≪仕事、するよ≫
≪頑張ろう≫
≪カッコウ、どうしたの?≫
≪ライチョウ、あたしはもうダメだよ。もうダメになっちゃったんだ≫
≪いつかのオオルリと同じような事を言っているな≫
≪タンチョウ?≫
≪なんだ、ライチョウ≫
≪べつに………≫
≪これだけか?≫
≪いや、俺もいるんだがコメントし辛くてな≫
≪幸せを運ぶ青い鳥か≫
≪まさしく青い鳥になってしまった気分だ。みんなに幸せを配って回りたい。例えそれが幸福の王子のような破滅が待っていたとしても≫
≪仕事前に不吉な言葉は聞きたくないわ。例えロマンに溢れたものでもね≫
≪よし、仕事にとりかかろう。タンチョウ、依頼内容を教えてくれ≫
≪分かった≫
タンチョウは手紙を写真に撮るとそれをアップロードした。
[頼む、神さま仏さま神鳥さま。校門の前にある右の最後の植木鉢を取って来てくれ。出来たら明日の昼休みまでに屋上に置いて欲しいんだ。一生のお願いだ、これっきりにするから。2年3組花町賢吾]
≪植木鉢………≫
≪右のってどっちから見た右なんだろう?≫
≪そうね、校門の外からか内からか明記されていないわ≫
≪ターゲットはここからでも確認できる。なんの変哲もない植木鉢に見えるがこの花町くんには必要な物なんだろうな≫
≪困った奴だ。無視していいぞ≫
≪ヤマセミ、知り合いか?≫
≪バスケ部の後輩だ。あのバカ、何をやってるんだ≫
≪なるほど。だが、依頼として投稿された以上は取り組まなければいけない。ヤマセミは参加するのか?≫
≪後輩が依頼主だからな。一肌脱ぐよ≫
≪分かった≫
≪ピーピーうるさい黄色い鳥がいないな。珍しいぜ?≫
≪本当だな。キセキレイがいない≫
≪珍しいの?≫
≪ああ、ほとんど毎回顔だけでも出していたんだがな≫
≪そんな時もあるよ、きっとね≫
≪期限が決まっている。明日の昼休みまでだ。それまでに情報を集めよう≫
≪了解≫
≪待って、みんなに忠告しておかなくちゃいけないの。聞いて≫
≪コジュケイ、どうした?≫
≪特にタンチョウ、あなたよ≫
≪そうか≫
≪図書委員長の岩畑くんと副委員長の三宅さんが前回のランタン紛失事件を調査してる。私も事情聴取されたわ。気を付けて、特にタンチョウは疑われてるはずよ≫
≪どうしてだ?≫
≪事件当日に急に2度も会長と接触があった事を疑問視してるのよ。彼らは疑うに十分だと言ってるわ。会長はあなたをかばっているけれどね≫
≪そうか。手早く済ませよう≫
≪あの推理小説オタクどもが嗅ぎまわってるのか。適当にあしらってやろうぜ≫
≪油断は出来ないぞ。最後までな≫
コジュケイからの報告を聞いてタンチョウはあの日から背中に感じていた監視されているような感覚に納得がいっていた。
図書委員会委員長の岩畑和馬とは同じクラスだった。彼がタンチョウを監視しているのだろう。
無計画に動く事は危険だと考えたタンチョウは調査を他のメンバーに任せる事にした。
彼は授業中に黒板の文字をノートに写していく作業と並行して植木鉢をひとつないしはふたつをどうやって屋上へ素早く持って行く方法を考えていた。
校門の前には左右に6つずつ植木鉢が置かれている。毎日、校門からこの学校に出入りする者ならその存在に気付かないはずがない。
校門から屋上へ行くには校舎内の階段を上る必要がある。花が植えられたままの植木鉢を持って素早く上がるのは重労働だろう。
なにか方法を考えなければならなかった。
植木鉢を運ぶ方法とそれを実行するために岩畑たちの監視をかいくぐる方法を。




