第五三羽 古びたランタン編
次の日、タンチョウはオオルリからランタンを受け取るとすぐに彼は生徒会室の扉の前にランタンを置いた。それで返したつもりだった。
彼は前日からどうやってライチョウがランタンを入手したのか尋ねたかったがなかなかその機会に恵まれない。
彼らのグループは幸大と真雪が結ばれてしまった事をひっきりなしに話題にしていて入り込む余地がなかったのである。
賛否両論があった。
キセキレイは≪弱みを握られているに違いない。みんなで助けてあげようよ≫などと言い、日を跨いでもその主張を変えなかった。
カッコウは≪いいなあ、あたしもあれだけ熱烈に愛されてみたいなあ。まだそんな経験がないんだよねえ≫と酷く感傷的な言葉を最後に眠りに就いた。
それぞれの夜があった。そして眠りに就いていく。
翌日の1時限目でようやくタンチョウはライチョウに尋ねる事が出来た。
≪ライチョウ、どうやってランタンを入手したんだ?≫
≪あら、知りたいの?≫
≪教えてくれ≫
≪キセキレイが手伝ってくれたのよ≫
≪キセキレイが?≫
≪ええ、だからキセキレイに尋ねた方がいいと思うな≫
≪分かった。キセキレイ、教えてくれ≫
≪イヤだー。教えなーい≫
≪どうして?≫
≪うーん、どうしてだろうなー。タンチョウはどうして知りたいの?≫
≪参考にする。次回は俺が潜入するだろうからな≫
≪じゃあ、もっと教えない。無根拠という直感は根拠の前では無敵に等しいのだよ≫
≪よく分からんが、なるほど、嫉妬か≫
≪はあ?≫
≪タンチョウ、それは良くないわ≫
≪マジで意味わかんない。もうタンチョウとは金輪際、話をしないから。寂しくなって泣いても知らないからね≫
≪困ったな≫
≪かける言葉もないわ≫
≪またな≫
≪ええ、またね≫
タンチョウはキセキレイに直接尋ねようと彼女の教室を訪れたがその姿はなかった。
キセキレイのとった方法はタンチョウには分からなかった。頭を悩ませていると藤堂が屋上で考え事をすると言ったのを思い出して彼もそれに倣おうと屋上へと向かった。
先客がいて手になにやら持っている。
キセキレイが中型のドローンを飛ばしていた。
「げ」
「よう」
キセキレイは返事をしなかった。
ぷいと顔を逸らしてタンチョウの方を見ようとしない。ドローンは2人の頭上の2メートルほどを滑空している。
「これを使ったのか?」
まだ口を開こうとしないキセキレイだったが頭上のドローンは円を描いて飛んでいた。
「上手い事やるもんだな。オシドリから借りて来たんだろう?」
やはりキセキレイは口を開かない。
タンチョウは柵に手を置いて下を見やるとそこからは裏庭を一望できた。
鐘が鳴って授業の始まりを告げた。
「鳴ったよ、鐘」
いつのまにかキセキレイがタンチョウのすぐそばに来ていた。手には飛ばしていたドローンを持っている。
タンチョウと同じように手すりに腕を置いているが瞳でタンチョウを覗き込んでいた。
肩のあたりまで伸びたキセキレイの黒い髪が靡いている。
「もう少しここに居ようと思うんだ」
「へえ、珍しいー」
2人は満足するまで屋上で過ごした。時間がゆっくりと流れていく。




