第五〇羽 古びたランタン編
5時限目が終わった。
勢いよく立ち上がった幸大は授業を終えた直後のバタバタと騒がしい教室内をサッと見回すと真雪が席を立ったのを確認して彼女の机の中の筆箱の上に渾身の力で認めた手紙を置くのだった。
誰にも見られていないと思っていたが数人はこの光景を見ている者がいた。
そのうちの2人はヤマセミとカッコウである。4人は同じクラスだった。
そして幸大の休み時間はこれだけで終わってしまった。手紙を置いた彼は重大な仕事を終えた後の職人のように作品の評価を気を揉んで待つのだった。
休み時間に入ると同時にタンチョウは駆け足で生徒会室に向かっていた。
藤堂を誘導しなければならない。実行の補佐に回るのは初めての事で新鮮さを感じていたのは初めの方だけで徐々に緊張してきて失敗を許されない重圧を背負っていた。
それでも初めての事に楽しみを覚えていたのは間違いではなかった。
誰かに仕事の主要部分を任せて傍から見守る事が出来る性格ではないように自覚していたが決まったからには仕方がない。
そしてタンチョウは生徒会室の扉の前に立った。ノックをする。
誰が出るだろうかという投げやりな考えを持って待っていると果たしてその扉を開けたのはコジュケイだった。
「藤堂生徒会長はいるかな?」
「ええ」
コジュケイはタンチョウを確認すると奥にいる藤堂の方へと歩いて行った。
タンチョウは生徒会室の外で藤堂がやって来るのを待った。その間にぐるりと部屋の中を観察すると確かに古びたランタンがあった。
部屋の真ん中にある机の上にランタンとキャッチャーミットが程よく置かれていた。今、盗ってしまうのは難しい。
その部屋の中には織川副会長がいてタンチョウが訪問して来た事を知るとぎろりと睨みを利かせていたのだった。
作業をしていたはずの机から身体を離し、腕組をして体を仰け反らせるようにイスの背もたれに身体を預けていた。敵意を隠そうともしない態度にタンチョウは清々しささえ覚えた。
コジュケイに呼ばれた藤堂はタンチョウの姿を認めると「やあ」と言って右手を上げて立ち上がった。
藤堂は書類を片手にタンチョウへ近づいてきた。
「二度も君と会う今日はどんな日だろう?」
「きっと良い日だよ。ちょっと話さないか?」
「お誘いとは。喜んで応じようかな」
藤堂はタンチョウの誘いに応じる振りを見せて生徒会室内へ招いたがタンチョウは入る事は出来ない。
彼はこの外に彼を誘導するためにやって来たのだ。
それでも中にはコジュケイと織川が残っている。織川についてはライチョウとコジュケイに任せるしかない。
「中に入るのは止めておくよ。外でもいいか?」
タンチョウは振り返って目が合った藤堂に何かを訴えるように織川をチラリと一瞥した。
「分かった。外で話そうか」
「会長、それほど時間は割けませんよ」
織川が冷たく言い放った。
「分かってるよ。彼も外で話そうと言ってるんだ。それほど長話はしないだろう」
「ね?」と藤堂は笑って言うのでタンチョウは「ああ」と頷いた。




