第四八羽 古びたランタン編
藤堂と別れてしまうとタンチョウはすぐに連絡を取った。
≪マズい事になった。どうやらターゲットは今、生徒会室に保管されていて生徒会長が使っているらしい≫
≪どうやって確認したの?≫
≪藤堂と話をした≫
≪なるほどね。非常に危険な状態だわ≫
≪使ってるってどういう事なの? 生徒会長は夜な夜なランタンを片手に校内を徘徊してるの?≫
≪絵を描いているらしい。題材に使っているそうだ。絵を描くのが得意だと言っていた≫
≪確認したわ。確かに生徒会室にある≫
≪コジュケイ、助かった。生徒会室にはいつも人がいるのか?≫
≪誰かがいるでしょうね。みんな各自に仕事があるもの≫
≪そうか。どうやら俺は生徒会には人気がないみたいだな。権田と副会長の織川に嫌われているらしい≫
≪そうね、特に織川さんはあなたの話題が出ると露骨に態度に表すよ。私はそれほどでもないけれど≫
≪困ったもんだ。どうにか方法を考えよう≫
≪実行するつもりなのね?≫
≪何時でもどんな状況でも何かしらの方法はあるものだからな≫
≪そのセリフはあの小説のものでしょう? 馬鹿だね≫
≪読んだのか?≫
≪ええ、終わりまで。あっけない最後だった。ちょっと不満足≫
タンチョウは≪だからここでその不満を解消しようとしてるんだよ≫と思ったが会話には出さなかった。
≪ところでさー、普通に会話してるけどコジュケイがここに顔出すのって初めてじゃない?≫
≪ええ、ごきげんよう、キセキレイ≫
≪うわー、会話したくないー。ごきげんようなんて日常会話で使わないでしょ、ふつう≫
≪そう? ふつうってどのふつうなの?≫
≪始まってるわー、開戦してるわー、これは≫
≪争いは止めましょう。肉眼で確認できたのは良い事よ≫
≪だねえ、でも生徒会室にあるんじゃなあ≫
≪これが決定打だねー。危険すぎるよ、中止にしよう≫
≪ダメだ≫
≪そもそもどうしてもやらなくちゃいけない事じゃないでしょ。オオルリには勝ち目がないよ≫
≪そんな事はない。コマドリはもしかしたらオオルリに好意を寄せているかもしれないじゃないか≫
≪うーん、寄せてない気がするなー≫
≪どれだけコマドリの事を知ってるんだ?≫
≪155.3センチ、45.7キロ、A型、右利き。
積極的にコミュニケーションを取りに行こうとしない内向型。運動成績は中の下、学習成績は上の中。
2時限目前の休み時間に決まってトイレに行く。マイナーマスコットキャラが好きでキーホルダーをいくつか付けている。
弁当は白米派で卵焼きはベター、一段構成で量は少なめ、4人で食べる事が多く、会話に積極的に参加しようとしない。
牛肉より豚肉、豚肉より鶏肉が好き。
50メートル走9秒ジャスト、握力は右23キロ、左20キロ≫
≪あと、付け加えると最近の悩みは新しいマグカップが欲しいんだって。勉強中とか読書中に紅茶を飲むのが好きなんだよ。
それで自宅では眼鏡をかけてるの。いつもはコンタクトレンズを使うんだけど1デイレンズで乱視だから左右差があるんだって≫
≪付け足されてるじゃないか。キセキにも知らない事がある。ならそこにオオルリだけが知ってる事だってあるかもしれない≫
≪そんな事よりもアオゲラちゃん、自宅では眼鏡ってマジ?≫
≪うん、そうだよ≫
≪やばいー、超見たい。ゼッタイ似合うよ。オオルリにはもったいなーい!≫
≪イヤな奴だな≫
≪あれ、でもコジュケイが来たなら実行か中止か選べばいいんじゃない?≫
≪そうだな、おい、コジュケイどっちなんだよ? 初めて顔を出すなんて今までサボってたぶん働いてもらうからな≫
≪あら、十分に働いてきたつもりだったのだけれど? ヤマセミは酷いのね≫
≪そうだな、生徒会の状況を逐一報告していてくれたし。働いていたぞ≫
≪それでコジュケイはどっちなの?≫
≪そうね、私は賛成派かな。内部から渡す事は出来ないけれど状況報告は適時入れるようにするから≫
≪よろしく頼む≫
≪決まり。これで賛成派多数で実行ね≫
≪むー。わたしより先にオオルリがコマドリちゃんの眼鏡姿を見るなんて許せない。それだけは阻止する≫
≪実行後の事は好きにしたらいいさ≫
ようやくそれぞれの意見がとりあえず一つにまとまった事に満足したタンチョウは実行に向けて前向きに考えられるようになって来た。




