第四六羽 古びたランタン編
タンチョウはカバンからおにぎりをひとつ取り出すとアオゲラの席に向かった。
「これ」
「ありがとー」
「昼休みは危険だろうから。6時限目前の休み時間にやろうと思う。調査は昼休みの間にやろう」
「分かった」
タンチョウがアオゲラの席を離れる前に包みを取り除いたアオゲラは鮭おにぎりを食べ始めた。
「美味い。ほんとにタンチョウのお母さんはいい仕事するね」
「伝えておくよ」
再び鐘が鳴った。タンチョウは鐘が鳴るのを待っていたが、オオルリは待っていなかった。
滞りなく4時限目は終わった。
昼休みになった。タンチョウは昼食を手早く済ませると調査のために美術室へ向かった。
美術で使われる物のほとんどが美術準備室と呼ばれる倉庫に保管されている。
オオルリが望んでいる【古びたランタン】もその中にあるはずだ。
倉庫の入口は美術室の中にある。他の場所からは入る事は出来ない。もしタンチョウが準備室の窓から潜入を考えるなら別だが。
タンチョウは外に出て準備室の窓を確認してみた。
もちろん窓は閉められている。鍵もかけられていて思いのほか頑丈そうな作りに少なからず驚いていた。
実行の時がターゲットを肉眼で確認する時だったがそれではあまりに不安だった。どうにか保管場所だけでも確認しておきたい。
窓を見たのもそこからランタンの姿が見えるかもしれないと思っての事だったが窓はカーテンで閉ざされていて中の様子を窺い知る事は出来なかった。
何か知恵が必要だった。美術室前の壁にもたれて考え込んでいたタンチョウは近づいて来る影に気が付かなかった。
「やあ」
馴れ馴れしい呼びかけに聞きたくない声が廊下に響いた。
タンチョウはぎくりと身体を硬直させると声の主の方を見た。
「久しぶりだね」
生徒会長の藤堂朝陽だった。
「藤堂か」
「権田に会ったそうだね。彼、怒ってたよ。茶化してるって」
「茶化していない。たまたまだ」
「でも、僕の親衛隊の一員になってたそうじゃないか。それもたまたま?」
「そうなるな」
藤堂はタンチョウの答えに笑うと2人の間には沈黙が訪れた。
「何か用事があるのか?」
タンチョウが藤堂に尋ねた。早々に立ち去って欲しいという願望を込めて。
「うん、そうだった。美術室に用事があるんだ。悪いね、君の悩みの間を奪ってしまって」
藤堂は「悪気は無いんだよ?」と微笑むとタンチョウの前を横切って美術室の鍵を開けた。その手にはしっかりと正規の鍵が握られていた。
タンチョウは好機と見ると藤堂の後に付いて行った。
「あれ? 君も美術室に用があるのか?」
「いや、用事はない。
ただ最近、些細な紛失事件が多いと親衛隊の活動に参加する時に耳にした。藤堂朝陽という生徒が美術室から物を盗らないように見張るだけだ」
タンチョウの答えに藤堂は声を出して笑った。
「そうだね、では見張っていてくれ」
「そうするよ。可笑しな真似をしたらすぐにしょっぴくからな」
藤堂はまた快活に笑った。




