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第三九羽 ペットボトルロケット編

 まだ騒がしかったが電灯は点いていない様子だった。腕章はある。


 それなのに外に出れないでいるのは権田がいるかもしれないという不安があったからだ。


 彼の大きな体の影を見る事も出来ずにいた。カッコウにメッセージを送ったが返事は未だにない。


 きっとこの騒ぎに夢中で気付いていないに違いない。


 一か八かで外に出ようと決心がついてドアノブを握ると部室棟の出入り口の方から何かが走る音が聞こえて来た。


 地面を疾駆する音が聞こえた。


 するとまた一段と騒ぎが大きくなったのでタンチョウはこれを好機と見て外に出た。


 外に出たタンチョウは廊下の真ん中を真っすぐに走る物を目に捕らえた。


 ミニ四駆のような形状の車体が音を立てて走っている。


 トイレから出たタンチョウはそのまま出入り口の方へと走り出した。



「いぇーい! 走れ走れー!」



 カッコウがタンチョウの腕を掴んで無理矢理に腕を組むと2人は一目散に部室棟を出て行った。



「あ、あれは何だったんだ?」


「あれはね、キセキちゃんの操縦してる車だよ」


「あんなの持ってたのか。以前にも高性能な眼鏡を使っていたが色々持ってるもんだな」


「違うよ。あれはね、オシドリから貰って来たんだって」


「なるほど、オシドリからか」



 そして2人は部室棟の外へと出た。



 翌日のペットボトルロケットコンテストは大きな問題もなく無事に終わった。


 最下位はゲーム部で酷い落胆ぶりを見せていた。


 依頼主である竹田さんは書道部で4位だった。


 それでもどこか誇らしげで瞳を輝かせていたのは映る男性が2位を取って喜んでいたからだろう。


 1位は演劇部だった。


 タンチョウは1人でグラウンドの隅に座って飛び交うロケットを見ていた。


 凄まじい勢いで飛翔するロケットを見て童心を呼び起こすとごろりと大の字に横になって空を見上げた。



 ゆっくりとした時間が流れている。


 以前からタンチョウは依頼を終えると虚無感からか少しだけ憂鬱になっていたが今日もその虚無感が一段と強いので一層、物寂しいような一人だけ流れに取り残されているような寂莫とした気持ちを覚えるのだった。



「やっほー。何してんの?」



 タンチョウの頭上に立って声をかけて来たのはキセキレイだった。

 その横にはライチョウがいる。



「珍しい組み合わせだな。なにがあったんだ?」



 タンチョウは笑いながら起き上がった。2人はタンチョウの後ろに座った。



「そこでたまたま会ったのよ」


「そー、わたしは借りてたミニ四駆をオシドリに返してからついでに寄っただけ」


「私はこのコンテストに最初から興味があったから。タンチョウは?」


「俺は、ヤマセミを誘ったんだが断られた。オオルリは悩んでて誘えないし、それで結局、一人で来たんだよ」


「ふーん」


「そう」


「良かったね、なんか竹田さんも嬉しそうにしてる」


「ゲーム部の落胆ぶりは目も当てられないけどな」


「仕方がないわ。公正がルールですもの」



 後片付けを始める文化部員たちを見ているのもつまらないタンチョウは立ち上がった。



「ねえ、これから喫茶店でも行かない? 初めてでしょ、私たちが休日にこうしてそろうのって」


「喫茶店ねー、どうしよっかなー」



 ライチョウは尻についた埃を払いながら立ち上がってタンチョウを見た。



「いいよ。行こうか」


「決まりね。美味しいところを知ってるから任せて」


「俺はコーヒーがいい」


「わたしは甘いミルクティーが好きー。帰ってゲームするつもりだったのに」


「ゲームはいつでもできるじゃない。私は断然、紅茶派。

 話のタネはまずはタンチョウがどうして腕章を失くしてしまったのか聞きたいわ」


「ほーん、あのタイミングで失くすなんて余程のドジでマヌケだねー。聞かせてもらおうじゃーん」



 タンチョウは大きくため息をひとつするとなんとか上手く誤魔化せないかと頭を悩ませた。


 そして3人は並んで校庭を出て行った。




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