第三八羽 ペットボトルロケット編
手に取ってみると少しだけ重く感じた。
気のせいかもしれないと考えもしたがここに保管されているのならこれがターゲットに違いなかった。
ポケットに入れていた袋を取り出すとロケットをその中に納めた。頭が少しだけ出ていたが構わずに肩にかけると鍵を開けたままで部室を出た。
階段にさしかかったところでスマホが振動した。
≪今どこなの?≫
≪部室棟の2階にいる。ターゲットは確保した≫
≪そう、良かった。でも、親衛隊の一団が向かってるわ。あなた、女子生徒たちを脅かしたでしょう≫
≪ああ、急いで逃げる≫
1階に下りると親衛隊の一団が目の前に迫っている音が聞こえて来た。
出口に向かうには親衛隊の方へ行かなくてはいけなかった。
どんどんと迫って来る足音がタンチョウの余裕を奪うがまだ冷静だった。
窓を開けて逃げるには時間が足りない。廊下に隠れ場所はなかった。立っていれば見つかるだろう。
タンチョウはトイレの中に潜む事にした。
窓から逃げる可能性に賭けてみたがトイレの窓はタンチョウの身体を通すには狭かった。
入った時に、というよりも扉を開けた時点で選択を誤ったと感じた。
扉を閉めて他の選択肢を見つける時間もなかった。
2階に戻るのは避けるべき選択だった事だけは確信していた。
親衛隊たちはなにやらがやがやと喋りながらトイレの前を通過していった。
どうやら何かおかしな事が起きたというだけの事を聞いてやって来た一団のようだった。
彼らはまず電灯を復旧させようと相談していた。
廊下はますます人が多くなっていた。トイレに人が入ってこない事だけが唯一、タンチョウにとっての救いだった。
≪1階のトイレに逃げ込んだ。廊下に人が大勢いる≫
≪分かったわ。窓から腕章を投げ入れるから着けて脱出して≫
≪助かるよ。2人でいるんだろう?≫
≪いいえ、カッコウはそっちの廊下にいる親衛隊の一団に紛れているはずよ。
彼女、そういう雰囲気がなによりも好きなのよ≫
≪困った奴だな≫
≪着いたわ。腕章を投げ入れるから窓を開けてちょうだい≫
≪了解≫
タンチョウが小さな窓を開けるとライチョウがさっきまで着けていた腕章が投げ入れられた。
拾い上げて腕に着けてみたもののどうにも心もとない。それはきっと権田に返してしまったからだろう。脱出の力になり得るものとは到底思えなかった。
「ライチョウ、そっちでターゲットを受け取れるか?」
「ええ、出来るわ。でも、その窓を通せるかしら?」
「何とかやってみよう」
ロケットはトイレの窓を通過してタンチョウの手からライチョウの手へと移った。
「始末は私に任せてくれる?」
「ああ、好きにしてくれ」
「了解。じゃあ、また後で会いましょう」
「頼んだぞ」
窓を閉めるとタンチョウはトイレのドアのすぐそばで外の様子を窺った。




