表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/368

第三六羽 ペットボトルロケット編

 ゲーム部室のある部室棟へは2階の渡り廊下から行くしかない。


 もちろん校外に出る事が出来るなら1階からでも入れるがタンチョウは2階から行く事を選んだ。


 階段を上っていくと踊り場に仁王立ちでタンチョウを見下ろす大きな影があった。


 美化委員長である権田完結だった。



「権田」



 タンチョウは階段の半ばで立ち止まり、呟くようにその名を口にした。


 権田は喋らない。沈黙を守ったままでタンチョウを見下ろしている。

 

 キッと結ばれた口は何をしようとも開きそうにはない。


 タンチョウは権田が喋らない事を知っている。それでどうして美化委員長になれたのか、実際に仕事に取り組むときにどうしているのか甚だ疑問だった。


 それでもタンチョウは権田に話しかけようと口を開いた。



「久しぶりだな」



 再び上り始めたタンチョウは踊り場に辿り着くと権田の大きな体の脇を通って2階へ向かおうとした。


 すると権田がタンチョウの腕をがっしりと力強く掴んだ。



「なんだ?」



 タンチョウは冷静だった。乱暴を振るう男ではない事を知っている。


 それでも腕を掴むその手には不穏な力が込められていた。



「お前が生徒会長に協力するなんて考えられない。どういうつもりだ、どうしてその腕章を付けている?」



 権田が口を開いた。


 危険な状況にもかかわらずタンチョウはその事実に驚きを認めると嬉しさからか自分でも分からないまま微笑んでいた。



「気まぐれだ。友人に勧められてな。校内を見回れと言うので部室棟へ向かっているところだった」



 肩をすくめて答えるタンチョウの腕を離した権田は向かい合うと手を差し出した。



「腕章を返せ。お前には要らない物だ」



 タンチョウは右腕に付けられている腕章に目をやった。元々自分の物でもない。今日限りの物だ。未練など全くない。


 右腕から腕章を外すと権田の手のひらに置いた。


 権田はそれをくしゃりと握りしめるとタンチョウの手にはもう二度と渡らない事が示された。



「早く帰れ」



 それだけ言うと権田は踊り場を下りていった。


 タンチョウは権田と別れると急いでゲーム部室へ向かった。


 すでに腕章は無くなった。次に親衛隊に見られてしまったら捕らえられてしまうに違いなかった。


 2階に上がると壁際に身体をくっつけて廊下を窺った。


 話し声が聞こえてくる。親衛隊の数人が廊下で話し込んでいた。


 離れているので内容は聞こえていないがゲーム部室へ行くにはそこを越えていかなければならなかった。


 ライチョウとカッコウはまだやって来ていない。どうにか引き付ける必要がある。


 あるいは廊下を照らしている電灯さえ消す事が出来れば手の打ちようがあったがブレーカーの場所へ行くには離れすぎていた。


 再び権田に遭遇する事はなんとしても避けなければならなかった。


 潜んだままでスマホを取り出したタンチョウはライチョウに連絡を取った。



≪ライチョウ、どこにいる?≫


≪部室棟についたところよ≫


≪腕章を失くした。自由に動きが取れない。部室棟の電灯を消してくれないか≫


≪分かった。少し待ってて≫


 それからほどなくして叩くような音と同時に部室棟の電灯が消えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ