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第三五羽 ペットボトルロケット編

 6つのロケットがある。全文科系の部がコンテストに参加するのだ。ロケットの前には部の名称が書かれた紙がある。


 ゲーム部の紙を見つけるとタンチョウはゆっくりと布を取った。


 見るだけでは普通のペットボトルロケットだ。形状はタンチョウが想像していた物と変わりがない。


 装飾は過剰というほどにされている。部員が好きなキャラが丸みのある面に上手く書かれていた。


 赤い文字で【求む! 次世代を担うゲーマー!】と書かれていた。


 手に持ってみるとペットボトルの感触があった。柔らかく少しだけ凹んでしまう胴体には何も入っていなかった。


 タンチョウにはどんな不正を行っているのかこの時点では判断が付かなかった。


 だが、依頼は不正とされている事を施されたロケットを処分する事だ。


 それでもその処分に踏み切れないでいるのは処分するに足る理由が見られないからだった。


 他のロケットも持ってみて重さを比べて見るが変わりがないように思える。タンチョウはますます分からなくなってしまった。



「タンチョウ、確保したんでしょ? 行きましょう」



 ライチョウが急かす。タンチョウは答えなかった。


 窓を静かに開けるとライチョウは外の様子を窺った。第2会議室の窓からの脱出は良い案に思えた。


 彼女は外の電灯に照らされて半身を白く染めながらタンチョウを見やった。



「ねえ、タンチョウ?」



 囁くような声は2人しかいない会議室内に響き渡った。



「いや、これじゃない」



 タンチョウはしっかりと強く呟いた。ライチョウはそれでも耳を疑って問い返した。



「どういうこと?」


「これじゃない」



 明らかに説明不足のままタンチョウはロケットを元の位置に戻した。納得がいかないライチョウは窓際に寄って来るタンチョウを咎めた。



「説明して」



 ライチョウが説明を再度求めると声は少しだけ大きくなっていた。


 すると扉の先で見張りに立っていた親衛隊の生徒2人の耳に届いた。



「中から声がしないか?」


「お前にも聞こえたか。俺にも聞こえた」


「確認しよう」



 扉を開ける音が聞こえる。


 タンチョウは窓際から退こうとしないライチョウの肩に手をかけて言った。



「後でな」



 サッと窓から外に出たタンチョウは外の茂みに身を潜めた。


 その後にライチョウがサラリと流れるようにタンチョウの隣に降りると、同時に2人の見張りが扉を開けて中を確認する声が聞こえて来た。



「なんだ、窓が開いてるじゃないか」


「本当だ。でも、ずっと開いてたのか? 声が聞こえたのは今だけだったのに」


「風が強くなったんだろう。カーテンの裾が壁に当たっていたんだよ、きっと」


「とにかく閉めよう」



 2人が窓際に近づくころには茂みに潜んでいたタンチョウとライチョウはすでに校内に戻っていた。



「説明してね、タンチョウ」



 廊下でライチョウはタンチョウに問い質した。



「あれじゃないと判断した。キセキレイから連絡があったんだ。

 ロケットは一度、生徒会の庶務2人によって審査されているらしい。それなら不正があればバレるはずだ。

 それを目視で確認した。あのロケットにはなんらおかしな点はない。

 だが、不正の事実を竹田さんは握っている。

 もしかしたらあれは囮で本番前に似た造りの不正を施したロケットと取り換えるのかもしれないと考えたんだ」



 ライチョウはじっとタンチョウの目を見据えて話を聞いていた。タンチョウもそれから逃げようとしない。



「じゃあ、そのロケットはどこにあるの?」



 タンチョウはにこりと笑ってとっておきの宝物の在処を教えるように弾んだ調子で話した。



「ついさっき、ヤマセミから報告があったんだ」



 報告の内容を手短に教えるとライチョウは怒りを隠さなかった。



「どうしてヤマセミはその情報を共有しようと思わなかったのかしら?」


「そうだな、真偽のほどは分からんが『カッコウが嫌いだ』と言っていた。カッコウの前では発言したくないらしい」



 ライチョウは「まあ、理解できない理由ではないわね」と笑って言った。



「じゃあ、私はカッコウを回収して来るから先に向かってて」


「ああ、よろしく頼む」



 そうしてタンチョウはひとりゲーム部室へ向かい始めた。


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