第三四羽 ペットボトルロケット編
「さて、まずは第2会議室へ行こう」
「もちろん、そこに用があるんだから」
「ねえ、秘密ってどんなの? 特技ってなに?」
「秘密を言ったら意味がないじゃない」
答えながらカッコウはちらりとタンチョウを睨みつけた。目が「あなたのせいよ」と訴えていて苦笑するしかなかった。
「えー、教えてよ。タンチョウに披露したんでしょ?」
「秘密よ、秘密。いつか教えられる時が来るかもね」
「もー、けち。ライチョウの特技ってすっごい気になるの!」
「しつこいのは嫌いよ」
「あは、ごめんごめん」
「カッコウは大胆だな。俺は悩んだ末に潜入のヒントをもらって思いついたのに。いつ潜入を思いついたんだ?」
「うーん、別に思いついたって言うかそれしかないなって感じだったからね。
あとは元々、親衛隊には興味があったんんだ。これは面白そうだぞ、ってね!」
「それにしても安土に接触するなんて危険が大きいわ。てっきり親衛隊に入ってる友人を頼るのかと思っていたのに」
「あたしも迷ったんだけどねえ。安土ちゃんに頼るのが一番かなって思ったの。危険性は度外視してね!」
カッコウは笑って言った。
タンチョウも釣られて笑ってしまったがそれと同時にひとつだけカッコウについて分かった事があった。
「カッコウは、身バレしてもいいと思ってるんだろう?」
沈黙があった。カッコウは答えない。ライチョウは驚いて信じられないといった表情のままカッコウの答えを待った。
「あは!」
明るく笑うのが彼女の答えだった。
ため息をつきながらライチョウは尋ねた。
「どうして安土さんに頼るのが一番だと思ったの?」
「うんとね、まあ友達で頼みやすいっていうのもある。
でも、安土さんに腕章をもらったっていうのが大事なの。彼女の許可があると示してるものだからね。
自然と親衛隊内での評価が高くなるから動きやすいと思った。危険性も高いかもだけど、校内での自由度も高いかなって」
カッコウの説明を聞いたライチョウは納得したようにひとつだけ頷いた。きっと納得できない理由だったなら彼女はすぐに離脱したに違いない。
歩きながら話をしている間にも数人の他の親衛隊の生徒たちとすれ違った。
ほとんどみんなが彼らに注目していた。
引き留められたのも一度や二度ではなかったが腕章を認めるとすぐに解放してくれた。
そうして彼らは職員室へ辿り着いた。
彼らの予想通りに見張りは立っていた。第2会議室の扉の前に2人の生徒が立っている。
あの中にターゲットがある。また容易には手に入らないだろう。
「さて、方法は2つある。どちらを選ぶかだな」
「そうね、任せるわ。職員室からの潜入か、正々堂々と正面からの潜入か。カッコウはどっちがいいと思う?」
ライチョウが尋ねたがカッコウはすでにその場にいなかった。2人は顔を見合わせると職員室を覗き見ていたカッコウが戻って来た。
「職員室内は荻野先生ひとりだったから職員室からの潜入の方がいいんじゃないかな?」
「まったく呆れたぞ。どこ行ったのかと思った」
「ひとりでも潜入は簡単じゃないわ。引き付けておかなくちゃ」
「あたしがやるよ。荻野先生とはよく話すからさ」
「任せよう」
方針が決まると3人は頷き合うと職員室へ向かった。
タンチョウとライチョウがカッコウが職員室へ入り込む隙に姿が見えないようにしゃがんで職員室内に入った。
「失礼しまーす!」
カッコウは大胆に入室した。教員が許可しなくては入れない事が多いがお構いなしといった風だった。
カッコウの大胆さに目をつぶって呆れたライチョウはタンチョウの腕を突っついてそれを合図した。タンチョウは笑って返すしかなかった。
「荻野先生、ねえ、これ見て、これ!」
「なんだ、こんな時間に。早く帰りなさい」
カッコウはまるで小鳥が自分の遊び場である庭を歩くように慣れ親しんだ様子で職員室内をずんずんと進んで行った。
「こーれ!」
カッコウが荻野の前に示したのは親衛隊の腕章だった。
「なんだそれ?」
「これはね、生徒会長親衛隊の腕章なの!」
「そんなものがあるのか。まあ、親衛隊があるとは聞いていたけどなあ」
「すごいでしょー。あたしも親衛隊の一員なんだよ。生徒会長を支持しちゃうなあ」
カッコウは上手く荻野の視点を固定した。腕章に注目しているので荻野の目はほとんど第2会議室の方には向いていない。
この隙に2人は会議室の扉の前に向かった。鍵は案の定、かけられている。
タンチョウは準備していたピッキングの道具を取り出して音もなく開錠に取り組んだ。
そしてすぐに鍵は開かれた。見守っていたライチョウはずいぶんと手際がいいと内心で彼を褒めたが口には出さなかった。
第2会議室の中に入ると机の上にはそれぞれの文科系の部が保管したペットボトルロケットが布がかけられている状態で置かれていた。




