第三三羽 ペットボトルロケット編
教室内にはカッコウの他に数人の生徒が残っていた。タンチョウにも見覚えのある生徒がいた。
美化委員の副委員長である安土美雪がカッコウの傍に立っていたのだ。
安土は入室した2人を見ると頭から足先までをすっかりと観察してしまった。
「あ、来た来た」
「おーい、こっちこっち」とカッコウがタンチョウとライチョウを手招いている。
タンチョウは躊躇った。だが、ライチョウは全く躊躇わなかった。
すぐに教室の奥へと入って行ったのだ。あっと驚かされたタンチョウは彼女の後に続く形で歩き出した。
「済まない。遅れたか?」
「ううん、ぜんぜん大丈夫」
「良かった」
タンチョウがカッコウと話をする間、安土は2人を睨みつけるようにして粗を探していた。
「あなたたちが親衛隊に興味を持ったの?」
「ええ、少しだけね」
ライチョウが答えたが安土は彼女を胡散臭そうに見るばかりだった。これっぽちも信用していない様子だった。
そんな視線を軽やかに受け流しているライチョウだが、安土が信用しない理由も十分にあった。
ライチョウは才色兼備の女生徒として校内で一目置かれていた。知らない生徒はほとんどいない。
もしかすると生徒会長のように多くの人望を集める事が出来ると思われていた。そして事実、影で密かに人気があったがライチョウ自身は全く知らない事だった。
そんな女性が生徒会長の親衛隊に興味があると突然に言っているのだ。安土は最大限に警戒していた。
安土は胸に疼きを感じている。
嫉妬心と責任感がライチョウを親衛隊に迎え入れるなと訴えているが嫉妬心からではないと心の中で一度、否定してしまうと「迎え入れても問題はない」と強がりのような気持ちが湧いてきた。
そんな葛藤にもみくちゃにされて安土は胸の疼きの動揺をおくびにも出さずにせめてもの抵抗としてライチョウを強く睨むのを続けるのだった。
タンチョウはギスギスとした雰囲気に呑まれて言葉を発しようとしなかった。
3人が取り囲む中でカッコウはイスに座ってニコニコと楽しそうに3人を眺めていた。
「それにしてもアンタとこの人が友達だったなんて知らなかった」
安土はカッコウに親し気に話しかけている。ライチョウは不躾にこの人と呼ばれた事は気にしていない様子だった。
「あは、ひょんな事もあるもんだよ」
「あなたもね。あなたが私たちに協力してくれるなんてきっと会長も喜ぶわ」
「ああ」
タンチョウはほとんどぶっきらぼうに答えた。タンチョウと生徒会長は旧知の中だったのだ。そして体育委員長に勧誘されていたがタンチョウは断っていた。
面識があると言うのはひとつのデメリットだった。
「じゃあ、これを。今回の仕事は校内の見回りよ。最近は些細な紛失事件が多いの」
安土が3人に配ったのは親衛隊を表す腕章だった。
「7時過ぎまでは見回りを続ける予定だから。よろしくね」
「了解」
3人は笑って頷いた。安土は教室を出る前に3人の方を振り返った。彼女は最後まで彼らを疑惑の目で見ていた。
「行くか」
「ええ、安土さん、疑ってたわ。怖いぐらいにね」
「そうだな、警戒はして行こう。紛失事件が多いだなんて俺たちには全く心当たりがない話だろう?」
「そうね、私も何も紛失した覚えはないもの」
タンチョウとライチョウは笑い合っていた。カッコウも頷いている。
そして並ぶ2人の肩をバシンと叩いてカッコウが言った。
「さあ、頑張ろ!」
腕章をそれぞれの右腕につけると教室を出て行った。




