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第三羽

 犯人を絞らなければならなかった。


 タンチョウは吉田の交友関係を調べるためにまず部室へ向かった。


 まず彼は部の下駄箱を見た。キセキレイが言うようにシューズは替えるには十分なほど使い込まれていた。それでいて補修はされていない。爪先と側面の数か所に穴が開いている。


 他のシューズと比べても一目瞭然に吉田のシューズと分かった。


 部室へ入って一つ一つロッカーを開けてみたがどれも鍵がかかっていた。隠すには十分だ。


 ここかもしれない。タンチョウはそう考えた。だが、また確証とは言えない。決定的な何かが必要だった。


 休み時間の終わりも迫っている。


 最後にタンチョウはバレー部の部員がどのクラスに在籍しているのか名簿を確認した。パッと彼が思いついたのはキセキレイが言っていた写真を撮る事だった。これは一つの証拠になるかもしれなかった。


 彼は名簿の写真を撮って部室を出た。


 休み時間が終わる。


 そして四時限目が始まった。



≪バレー部の部員かもしれない≫


≪勘じゃないんだろう?≫


≪ああ、バレー部の部室を見てきた。あの部屋のロッカーは部員の人数分だけある。それも鍵付きのロッカーだ。名簿を確認したが吉田と同じクラスの部員は三人いる≫


≪疑うには十分か≫


≪三人を調べるには時間がギリギリだ。もう少し絞れればいいんだが≫


≪俺の調査によると吉田くんが好意を寄せる相手には幼馴染がいる。幼稚園から今まで一緒の奴がな。そいつも同じクラスでバレー部だ。候補には入るだろう。嫉妬に駆られての犯行、あり得る≫


≪名前は?≫


≪漆山拓人≫


≪うーむ、幼馴染と結ばれないエンドなんてバッドエンドなんだけどなー。山県さんはどうするつもりなんだ≫


≪なんにせよ俺たちには盗られた物を取り返すルートしかない≫



 昼休みになった。


 タンチョウは一年三組に駆け付けた。今度は野球部の後輩に接触するつもりはない。


 昼休みには弁当を食べる者が多い。もしくは購買で昼食を買う。


 となるとカバンから財布や弁当箱を取り出す必要がある。もし、疑いのある三人が奪ったプレゼントをカバンに隠していたとしたらそれを開けるにはいくらか不審な挙動が見られるはずと睨んでいた。


 扉の端に隠れてタンチョウは教室の中の様子を窺った。見るといくつかのグループに分かれている。


 三人の該当者は吉田と一緒にいた。同じ部活動など共通点が多い者は集まりやすい。


 漆山は吉田の前でカバンを開けて弁当箱を取り出した。


 もう一人の容疑者、安藤はカバンを開いたままで自身の背後に置いている。後ろを通る者には中が丸見えだ。


 そして最後の容疑者、石井も漆山と同じように他の人の前でカバンから弁当箱を取り出した。


 みんな盗った物をカバンに保管しているようには見えなかった。


 タンチョウはすぐに引き返した。道中、もっと絞るべきだと痛感していた。


 最後に彼は体育館に入ると体育館倉庫を見た。


 何か隠せそうな棚や箱を見つけるがことごとく当ては外れた。


 体育館を出たタンチョウは自身が空腹である事に気が付いて弁当を食べるために教室へ戻った。



≪バレー部と絞ってるのはどうして?≫


≪部活終わりの部室やダウン中は話しにくい事を話しやすい。

 互いに疲れているからポロっと話してしまうし、聞いて受け入れてしまう。恐らく吉田はその時に話したに違いない。教室内では渡す相手がいる。だったら教室内で話す事はしないだろう。漏らすとしたら部の中だ≫


≪タンチョウにしては良い読みだね≫


≪俺もやるときはやる≫


≪調子に乗らない。まだやる事はある≫


≪そうだ、俺たちは未だにパッケージの確保に至っていない≫


≪もちろんだ≫



 目新しい情報は上がらなかった。タンチョウはスマホを壊れんばかりに握りしめた。



≪オオルリ、コマドリ、キセキレイ、何か新しい情報はないか?≫



 返事は無かった。だが、既読は三つついていた。


 タンチョウは弁当を食べ終えると教室を出た。吉田が学校の玄関に入った時から奪われるまでの足取りを追うつもりだった。


 なにか見落としている物は無いか。探そうとしていた。



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